真田はきっと私が嫌い。同じクラスで隣の席なのに真田はこちらを見ようともしなければ、私が話し掛けても下を向いて“ああ”やら“そうだな”やらしか言わないから。隣で黒板の文字を書き写してる真田をちらりと見た。嫌われることをした覚えなんて一度もない。あんまり話したことないし、もっと言えば前に“制服を校則通りに来ているのだな”なんて誉められたりもした。まあ部活で決められてるから私と同じ部活の子は全員誉められてるんだろうけど。別にどう思われようがいい、と思うけどなんだか真田には嫌われたくないと思っている自分もいる。たぶんそれは私が真田を好きだからで、でもそれは真田にとったら迷惑な気持ちかも知れない。だから私は真田に告白しようだなんて考えてなんかないし、他の子みたいに応援に行こうなんて気もさらさらない。行ったらまた嫌われるんじゃないかって不安だから。窓の外では雨が降ってる。だから今日はテニスコートで練習は出来ない。ぼーっと窓の外を見ていたら先生に注意されてついでに当てられた。 「此処の答えは?」「あ、えっと‥」 この先生わからなかったら嫌味をめちゃくちゃ言ってくるから苦手。必死に答えを頭の中で探すけど、どうやら私の頭の中の引き出しには答えは入ってないらしく、吃ったまま。先生は苛ついたように顔を歪めた。どうしよう、と困っていると隣の席からノートが私に見えるように置かれた。その書かれた文字を言うと先生はにこりと笑った。 「はい正解。座って」 ほっと一息ついて真田の方を見る。真田は私の方を見ることはせず黒板だけを見ている。御礼を言いたいんだけど、なんだか言いだせない。恥ずかしいとか照れ臭いとかそんな場違いの気持ちが溢れてくる。気を落ち着かせるために黒板の文字を写すことにした。書き写すだけで頭には先程のことしかない。言わなきゃ、ありがとうって。御礼も言えない奴かって更に嫌われたらたぶん私はもう生きていけないくらい辛い。授業終了五分前、からんと音がした。床を見ると私の椅子の近くに転がっているシャープペンシル。拾おうとして手を伸ばすとその持ち主と手が触れる。持ち主なんて言わなくてもわかる。隣の席なんだから。 「ご、ごめん」「、いや」 拾おうなんてしなければ良かった。手が触れた、真田と。反射で手を引っ込めてそのまま前を向く。チャイムはそれからすぐに鳴った。シャープペンシルは真田の筆箱に戻された。言わなきゃ、 「あの、真田」「な、何か用か」「さっき‥ありがとう」「‥‥いや、俺の方こそ‥」 それだけ話して私は友達の元へ席を立った。表情はわからなかったけど真田の耳が赤くなっていたのはわかったし、私の顔は友達からからかわれるくらい赤くなっていた。 純愛ロジック
100613なっちゃんに捧げます