カメラを片手に今日も屋上から写真をぱちり。テニスコートであのセクハラしてくる先生の訳の分からない特訓にも負けずに練習してる私の王子様は素敵。あんなに汗を掻いてもあの特徴的なヘアスタイルは変わらずなのも素敵。あっ、今嚔した。可愛い。花粉症なのかな。ああまたノートに追加しなくては!木手永四郎マル秘ノート!誰も見ちゃ駄目よノートに!今日は原像に行かなきゃいけないから早く帰らないと行けない。だから放課後の木手くんを見れるのは後10分しかない。鞄に入れておいたノートを出そうと鞄を開ける。
「‥‥あれ?ない‥」
思わず声に出てしまうくらいの驚きが私を襲う。確かに今日の朝登校する前に鞄に入れて一回も取り出してないのにどうしてなくなったんだろう。おかしい‥。教科書出す時に一緒に机の中に入れたのかな。というかあれを見られたらヤバい。非常にヤバい。私以外の人が木手くんの可愛い所とかエロい所とかとにかくいっぱいにノート書いてある素敵すぎる所を知ってしまえば更にライバルが増えてしまう。只でさえ競争率高くて大変だって言うのに‥。ああでも教室に戻って探してる暇もない。どうしようどうしたらいいの神様。とにかく今日原像に行かないとあの写真屋1ヶ月に三回しか営業しないから危険なんだよね。まあノートは明日見つけることにしよう。誰にも見つかってませんように!
結局昨日は写真屋のおじさんが風邪のために原像出来ず仕舞い。しかもノートが心配で心配であんまり眠れなくて目の下に隈。最悪なコンディションの上に一時間目は数学だ。あの先生いちいち声が気持ち悪いんだよね。「はぁーい。じゃあ次はぁ」って言ってくるし。まあいっか。ノートは机の中にあるんだろうし。家から出ると玄関に見慣れない光景。あれ?私まだ夢の中なのかしら。でも恒っても痛くない。でもおかしい。だって私の家の前になんで木手くんがいるんだろう。近くに住んでるはずない。むしろ反対方向だし、しかも今日は朝練のはずだし。頭の中であれやこれやと考えていると木手くんが私の頭を叩いた。
「何してるんですか。俺を待たせる気ですか君は」
あれ、やっぱり痛い。するとこれは現実!?でもなんで木手くんが私の家の前で私を待ってるんだろう。も、もしかして私の長年の想いがエスパーで木手くんに伝わったのかも知れないわ!
「君に聞きたいことがありましてね」
「え、あ!はい!」
「このノートは君のですね?」
そう言って木手くんの鞄から出されたのは見覚えのある‥ってあれ!私の額に冷や汗が浮かぶ。ヤバい。非常にヤバい。というか私の人生で一番ヤバいかも知れない。木手くんの手には私の木手永四郎マル秘ノート!誰も見ちゃ駄目よノートが。も、もしかして‥
「あ、あの中身‥」
「拝見させて頂きましたよ。随分と隠し撮りが上手いんですね」
「あっ、えっと‥私そろそろ学校に行かないと、なーんて」
「大丈夫です。今日は創立記念日で休みですから」
そう言うと木手くんは私にノートを手渡した。あっ今日は創立記念日だった!やってしまった‥。去年も一昨年も確か創立記念日に1人だけ学校に行って先生に笑われたっけ。ていうかお母さん教えてよ!
「君は去年も一昨年も学校に行ってましたからね。今年も学校に行くだろうと思って待ち伏せしてたんですよ」
あっ、そうなんですか。と納得したがなんでそれを木手くんが知ってるの。私はそんなに目立つ方でもないのに。むしろ地味?ていうかなんで木手くん私の家の場所を知ってたんだろう。
「‥‥声に出てますよ」
「あっ」
「その答えを教えてあげましょう」
木手くんは私に近付いた。やっぱりカッコいいな。じゃなくて近い!凄く近い。木手くんがまた鞄に手を入れた。
「俺も君と同じだからですよ」
私の手に渡されたのは私の名前が書かれたノートだった。中には私の写真。あっ、これって。
「もしかして木手くんは‥」
「屋上から写真を撮っている女の子はやっぱり君だったのですね」
よかった、と言って木手くんはにっこり笑った。あ、これはノートに書かないと。
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