振られることはわかってたのに、どうしても認めたくないらしく私は涙を流しはしなかった。サッカー部で人気者の彼に他校の彼女がいるなんて知らなくてもわかるだろうに。私は何にもわかっていなかった。今、A組の教室には誰もいない。体育らしく男子の制服が畳まれずに机に無造作に置かれてある。その中で何故か置かれてあり綺麗に畳まれた柳生くんの体操服がやたらと目立っている。制服を畳んである男子も中にはいるけど柳生くんの整えられている体操服には遠く及ばない。

席を立って其処に近付いた。性格を物語っているかのような体操服の畳まれ具合は何だか面白かった。携帯には先程のメールがまだ残っている。顔を見なくて済むからメールで告白したのに、メールだと実感がイマイチ湧かない。振られたと認めたくないんじゃなくて理解してないだけなのかも知れない。一層のこと直接言って振られたら良かった、なんて思うけどもう遅い。私は彼に告白していて更に振られている。私は柳生くんの椅子に座った。相変わらず綺麗に片付けられている机の中。空っぽ。手を其処にいれると鉄の冷たさが手のひらから伝わってくる。体育が終わるまで後30分もある。私は携帯を開いた。

「いけませんね。授業をサボってしかも校内で携帯を使用するとは」

私はその声に反応してドアの方を見た。ああ、柳生くんとぽつりと言うと彼は私の携帯を取り上げてしまった。何するのと言わんばかりに私は彼を睨んだ。

「携帯を使用するのはやめなさい」
「柳生くんだって制服なんだからサボってるんでしょう」
「私は委員会があったので今から授業に行くつもりです」

先生みたい。煩い、苛々してるのかはわからないけど何だか私は泣きそうだった。

「何かあったのですか」

柳生くんはそう言うと私の携帯の電源を切って私に手渡した。私は電源の切れてしまった携帯を片手で持って反対の手で柳生くんの制服を掴んだ。

「、わかんない」

急に涙がボロボロ出てきた。振られてしまった実感?そんな物じゃない。泣いている理由なんてない。ただ涙が出てきた。ただ柳生くんの制服を掴んだ。ただ私は純粋にあの人のことが好きだった。

「柳生くん」
「なんですか」
「キスして」

柳生くんは一瞬戸惑ったように見えたが、私の希望通り唇を浅く重ねた。離れた唇が恋しくて今度は私から重ねた。

「‥ごめんなさい」
「何故謝るんですか」

柳生くんは私の顔を見つめた。そして私に言う。

「失恋をした後に付け込むようですが、私は貴方が好きです」

きっと今から始まる。

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