「俺を出し抜けるとでも思ったか」
「え、えーっと…」
「据え膳食わぬは男の恥という諺を知っているか?」

何故かベッドの上に寝かされ、真田に押し倒されている。私の頭のすぐ隣には真田の左手があり、私を見下ろす真田は普段の厳格で女慣れしてない彼とは違って、遊び慣れた雰囲気を醸し出している。こんなの真田じゃない、と信じたいが目の前にいる男は間違いなく真田弦一郎だ。


どうしてこうなってしまったかと言うと、3時間前に遡る。
ブンちゃんと幸村くんのお陰でデートにこぎつけた私は、真田との待ち合わせを私の家から近い公園にした。今は丁度薔薇が咲いている季節の為、公園では薔薇園が行われており、デートには最適だと思ったからだ。別に家が近いから連れ込めるとかそういう邪な気持ちではない。決して。そう決して。
待ち合わせ5分前に公園に着くと、真田はもうそこにいて、「ごめんね待った?」「いや」という最高にカップルっぽいやりとりをした後、私達は薔薇園を回った。
真田はあんまり薔薇に興味なさそうではあったけど、私に付き添って歩くペースを一緒にしてくれたり、私が人にぶつからないようにさりげなく手を差し伸べてくれたりと紳士的でえ、本当にこの人女慣れしてないのかな?と思った。この時気付けばよかった。
薔薇園を回っていると途中でなんと雨が降ってきてしまい、たまたま予報80%にも関わらず傘を持ってきていなかった私は用意周到な真田の傘にいれてもらった。そして「雨が降ってきたから帰るか。家まで送ろう」と言ってくれた真田に家まで送ってもらい、お茶をご馳走するという名目で部屋に無理やり上がってもらった。家に誰もいないのは確認済みだった。部屋にあがってもらい、適当に座っててと言い、キッチンに飲み物を取りに行こうとドアノブに手をかけたと思ったら真田がその手を掴み、私をベッドに投げた。そして今、私はまさかの出来事にあっているというわけだ。

「ま、待って!私そんなつもりじゃ!」
「嘘を吐くな。俺を部屋に呼んだのはお前だろう」
「ひゃっ…!」

耳を舐められ、変な声が出てしまう。私は真田とこういうことがしたかったけど、私は襲われたいんじゃなかったのに。真田は耳から首筋へと舌を這わしながら服の中に手を入れ、ブラのホックを外した。

「や、やめっ…」

服をめくり上げられ、胸を露わにされられる。恥ずかしくなって体をくねらせた。

「安心しろ。お前が処女というのはわかっている。俺に委ねていい」
「しょ、処女じゃない…!」
「…まあいい。余裕ぶっていられるのも今のうちだ」

真田はそういうと私の上に覆い被さり、私の初めてを全部奪っていった。


事が終わり、ベッドの上で動けなくなった私の代わりに真田がキッチンから飲み物を持ってきてくれた。真田はベッド近くの床に座る。

「…なんでわかったの」
「何がだ」
「その、私が…」
「お前が処女かどうかなんて反応を見ればわかる」

聞こうとしていたことをズバリ言われて恥ずかしくなり枕で顔を隠す。真田がこんなに慣れているなんて思わなかった。というか私達はあの屋上で初めて喋ったといっても過言ではないくらいだったのに初デートで最後までしてしまって大丈夫なのだろうか。いや元々私は真田を襲うつもりで…。そんなことより私達付き合ってる…?いや、告白もしてないのにシたんじゃもうセフレなのか…?しかも私処女だったのに全然痛くなかったしむしろ…

「何を考えている」
「別に何も考えてなんかないよ?」
「お前はすぐ嘘を吐いているのがわかるな。顔に出ている気をつけろ」
「え?!」

慌てて枕から顔を上げ、てあれ?

「馬鹿者。見えているわけないだろうが」

そういうと真田は喉を鳴らすように笑う。その顔を見ていると胸が締め付けられるような気持ちになる。なんだろうこれ。

「お前の処女を貰った責任をとってお前と付き合ってやろう」
「え、そんなのいいよ」

私があっさりそういうと、真田は不機嫌そうに私の頭に手を置く。

「付き合ってやると言っている。わかったな」
「は、はい…」

有無を言わさぬ顔でそう言われ、思わず了承してしまった。

「真田って、私の事好きなの」
「お前が俺の事を好きなんだろう」
「え?そうなの!?」

驚いてそういうと真田は目を見開き、肩を落とした。私何かおかしなことを言ってしまったんだろうか。

「とにかくお前は俺の恋人ということだ」

私の後頭部に手を置き、グイっと自分の方に引き寄せ、唇同士が触れ合う。
こうしてこの日は似非童貞の彼氏を手に入れた記念日となったのだった。
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