隣のクラスの真田は頑固者で親父臭くて女の子に触られるだけで赤くなるような男だから、絶対童貞なんだろうなと思う。そんな真田を見る度に「ああこいつ喰いたいなぁ〜」と思ってしまう。童貞キラーってわけじゃないけど、真田みたいに見た目は男らしいのに女の子に免疫なくて戸惑っちゃうみたいな人は好き。真田と遊びたい、出来たらそのまま筆下ろししてあげたい。そんな願望を持ち続けて早半年。もう卒業も近くなってきたし、願望を現実にするにはそろそろ動き出さないと間に合わない。どうしたものかと悩んだ結果、同じクラスのブンちゃんに真田と話す機会を作ってもらうことにした。ブンちゃんには「お前意外と童貞好きなんだな」なんて言われたけど気にしない。真田と仲良くなって、あの体の上に乗って快感に歪む顔が見たい。ああ、楽しみ。


ブンちゃんは思ったよりも早く時間を作ってくれて、今日のお昼の集まりに友達と一緒に混ぜてもらうことになった。ファンクラブなんかもあるとか聞く程人気者が多いテニス部の集まりに参加するのは気が引けたけど、これも目的達成の為、仕方ない。
お昼休みになり、ブンちゃん曰くこの時間はみんなで屋上に集まって食べているというのでその後ろについていく。屋上に着くとそこには見目麗しいテニス部の人達が。

「お、もうみんないるのかよ!こいつら前に話した俺の友達!こいつが真田のことが好きだって言うから今日連れてきてやった!」

ブンちゃんが私の背中をバシバシ叩きながらそう言った。さぁーっと血の気が引く。
丸井貴様…!なんでそんなことをこんな大人数の前で!
言った本人は良い事をしてやったとばかりに踏ん反り返っているし、実際私もブンちゃんには真田のことが気になるから紹介してほしいと好きと誤解されるような事を言ったから仕方ないのかもしれない。というかブンちゃんにお願いしたのが間違いだった。仁王に言えばよかった。いや仁王も駄目だ。結局こうなってた。

「へえ。珍しいね。真田に直接想いを伝える子なんてほとんどいないのに。ちょっと君、真田の隣に座っていいよ」
「ゆ、幸村!やめんか!」
「いいじゃないか。滅多にないことなんだし」

幸村くんがそう言うと真田は真っ赤な顔をして私の方をチラッと見て片手でその顔を隠すようにふん、と鼻を鳴らした。その可愛すぎる光景に頭を抱えそうになったけど、寸断の所で耐えた。さあさあと促されるまま真田の隣に座り、平常心を偽ってお弁当を広げる。

「ごめんね…。変な空気になっちゃって」
「い、いや。かまわん」

真田と隣同士でお弁当を食べられるのは素直に嬉しい。幸村くんありがとう。隣を見ると真田はお弁当に箸をつけていた。その綺麗な箸の持ち方にうっとりしてしまう。指が長くて綺麗。新たに仕入れた情報を頭の中に書き込み、私もお弁当を食べ始めるけど真田と話すことが案外ない。とりあえず無言で食べ続けているとブンちゃんが菓子パンを食べながら私の隣にどかっと座った。

「なんで話さないんだよ」
「色々考えてはいたけど実際こうなると困るもんなんだなって」
「バカお前そんなんじゃここ来た意味ないじゃん」

こそこそと2人でやり取りをしていたが、行動しない私に痺れを切らしたのかブンちゃんが真田になぁ、と話しかけた。

「真田はこいつのことどう思う?」
「は?!」

変な事を聞くせいで驚いて大きい声が出てしまう。こ、こいつ何を…!

「結構顔も可愛いし、性格もいいし俺はお勧めだと思うぜ」

何を言いだすんだと思ったけど不意打ちに褒められた所為で少し照れる。すると私が照れてるのに気付いたのかブンちゃんが「本気で受け取るなよ」と真田に聞こえないような声で言ってきた。

「む…。俺はそういった事はわからん」
「まあとにかく!1回こいつと遊んでやってくれよ!」
「…彼女の意志ではないだろう」
「あ!これに乗じるのは癪だけど遊びたいです」

すっと手を挙げて真田の方を見ると驚いたようで目を見開いていた。

「よし!じゃあ明日行ってこい!」
「馬鹿者!明日は部活だろうが!」
「終わってからでも時間あるじゃん」
「女がそんな時間に外に出るなど…!」
「私は別にそこまで遅くならかったら…」
「いかん!それに女が…」
「いいじゃん真田。行って来なよ」

ね、と幸村くんの有無を言わさぬ一言で、真田も頷くしかなくなり、こうして私の願いが叶う展開は急速に動いていくのであった。
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