不意に血の味が広がる、とは言ってもこれは己の血ではないのだから常のように記憶を飛ばすことはない。一瞬顔を歪めた彼女の唇の端から伝った血液を舐めとると、先ほどよりも確かな鉄の味が広がる。
「っしし、痛かったか?」
「……まあ、わりと」
このくらいの戯れはいつものことであって、目の前の娘は別段気分を害した様子もなく唇の端の様子を確かめるようにぺろりと舐めあげた。
大事にしなければいけない、したいと思う反面ひどくサディスティックな衝動に突き動かされて抗うこともなく素直に行動するのはまだまだ子供の証拠だとつい先日もスクアーロにからかわれたばかりだというのに。また堪え性もなくその唇に噛みつこうとしている自分にベルは苦笑した。
「なあに?」
「もっかいしたら、お前怒る?」
「怒らないよ」
「なんで」
そう問うと、向こうもまた意味が分からないといったように小首を捻る。
「だって、今更じゃない」
「そりゃまあ」
「……じゃあ、いいでしょう?それで」
実際のところ、これが自分が与えるものなら痛みも死でさえも甘んじて受け入れるということを知っていて、どうして分かりきったことを。と思っているのだろう、本当にお互いバカなまま成長がないのだ俺たちは



それは酷くやさしい暴力




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