朝教室に入ると城ちゃんが既に登校していた。静かに机に座り前を見てる。

(・・・うん、かっこいい!)


俺は上機嫌で近寄って声をかけた。

「おはよう。城ちゃん」
「ああ、おはよう。夏目」

城ちゃんは少し笑いながら挨拶を返してくれる。落ち着いた態度で、だいたいのことでは慌てない城ちゃん(神崎くん絡みだと別だけど)。世話焼きな所とか髪型とか、いろいろかわいらしく見えるだろうけど、いつも落ち着いて気配りもできて前を見ている城ちゃんは、俺にとって最高にかっこいい。
俺はこんなかっこういい人が恋人なのが誇らしくて、鼻歌を歌いたい気分になった。本当に歌ったら怪しまれるからやらないけどね。
その時、教室のドアがガラリと開いて神崎くんが入ってきた。俺が挨拶しようとしたその前に城ちゃんが立ち上って駆け寄って行く。

「おはようございます!神崎さんっ」
「・・・おー、はよ」


うん、ちょっと待とうか城ちゃん。
常々思ってたんだけどね、神崎くんと俺への対応が違い過ぎないかな?仮にも俺って城ちゃんの恋人だよね?いや、俺だって神崎くん大好きだよ?なんなら挨拶と一緒にハグしたいくらいにさ。城ちゃんが神崎くんのこと敬愛してるのもイヤって程分かってるし理解してるつもり。
でも、これはちょ〜っとないんじゃないかなぁ?

俺がそんなことを考えていると、神崎くんが不思議そうに声を掛けてきた。

「おう、夏目。・・・何だ、今日は元気ねえな」
「あ、いや、そんなことないよー。おはよう。神崎くん」
「・・・・・・おー」

いけないいけない。神崎くんに余計な心配かける所だった。神崎くんに気を遣わせちゃいけないよね!これは俺と城ちゃんの問題なんだから・・・。













放課後、幸運にも神崎くんは一人でヨーグルッチを買いに行った。それを良いことに、俺は城ちゃんに詰め寄る。

「・・・・・・城ちゃん」
「ど、どうした?」

驚いて目を丸くする城ちゃんに、俺は思い切って訊ねた。


「城ちゃん、俺と神崎くん・・・・・・どっちが好きなの!?」
「ぶっ・・・・・・!?」

城ちゃんは俺の質問に飲んでいたお茶を吹き出した。口を拭いながら、困ったように首を傾げる。

「い、いきなり何だ・・・」
「前から思ってたんだけど、城ちゃん。俺と神崎くんへの対応が違いすぎるでしょっ」
「そ、そうか・・・?」
「そうだよ!そりゃ、城ちゃんが神崎くんのこと尊敬して、敬愛してるのは分かってるよ?俺だって、神崎くんのこと大好きだし」
「夏目・・・」
「でもね、俺の好きの種類は違うよ。城ちゃんへの好きと神崎くんへの好きは全くの別物。態度でだって、それは表してるつもり」

俺は一旦区切って、城ちゃんを見る。城ちゃんは俺の話を必死に理解してくれようとしていた。まだ、訳は分かっていないみたいだけど。
・・・そういう所も好きだから、俺は余計に分かって欲しくなる。俺の気持ちを。

「でも城ちゃんはどうなの?俺のこと、好きって言ってくれるけど・・・どう考えても表面上では城ちゃんが好きなのは、神崎くんに見えるよ?」

もっと俺にも構ってよ。そう言って俯くと、城ちゃんの大きな手が頭に触れた。顔を上げると、真剣な表情をした城ちゃんがいた。

「すまない」
「・・・?」
「お前がそんな風に思っているとは、ちっとも気付かなかった」

そういう城ちゃんは本当にすまなさそうで、俺の頭を撫でてくれる。

「神崎さんへの想いは、お前への想いとは別物なんだ。本当に」
「・・・・・・うん」
「その、恋愛対象での好き、という気持ちはお前にしか、向いていない・・・」
「城ちゃん・・・っ」

恥ずかしそうに、しかし、しっかりと伝えてくれる城ちゃんに、俺は思わず涙ぐんだ。
俺は城ちゃんの手を取る。


「じゃあ、これからはもっと俺のことも見てね!?」
「ああ」
「挨拶の時、声の大きさに差がありすぎると嫌だからね!?寂しいから!」
「わかった。これからは、もっとお前のことも気に掛ける」
「あーもー!城ちゃん大好きっ」

俺が上機嫌で城ちゃんへの想いを叫んだ時、教室のドアが開いて神崎くんが戻ってきた。手と手を取り合っている俺達を怪訝そうに見る。

「何やってんだ。てめえら」

心なしかげっそりとしていて、眉間に皺が寄っている。
もう、かわいい顔が台無しだよー。

「お帰りなさい、神崎さん」
「お帰り!神崎くんっ。今ね、お互いの愛を確認し合ってた所なんだ!」

そう言ってニッコリ笑うと、神崎くんはああそう、とどうでも良さそうに席についた。


「ま、何でもいいけど。楽しそうだなあ、てめえは」
「うん、とっても」



大好きな神崎くんと愛してる城ちゃんに囲まれて、楽しくないわけがない。そういうと、城ちゃんは笑って、神崎くんはため息をついた。















城ちゃん好き好きな夏目!





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