朝、いつも通り目覚ましの音で起きて、いつもの時間に登校する。家から学校までの間、クラスメイトと会うことはまずない。校門近くになって、城山と夏目が声をかけてくる。短く挨拶をして、俺は何気なくあたりを見渡した。あいつはいない。
朝の教室であいつと顔を合わすことはとても少なく、俺もわざわざ探すことなんてしない。あいつは、だいたい時間ぎりぎりになって教室に入って来る。教師が来るまで暇な時間を潰すため、特に内容のない話をして過ごす。たまに、本当にたまに、横目であいつを見てみるが、携帯をいじる横顔しか見えない。こっちのことなんかまるで興味のない表情をしていて、何とも面白くない気持ちになる。別に、気にして欲しいわけでもないのに。俺もそこまで気にしているわけでもない。いつものメンバーとバカやっている方がずっと楽しい。





昼、俺はいつも購買で買う(だいたい城山に買いに行かせるが)。あいつも、弁当を持ってきているのは見たことないので、多分購買だと思う。多分、というのは昼にあいつを見かけることが少ないからだ。何でか教室にいない。別に教室で皆仲良く飯を食う、なんてルールがあるわけではないからいいんだが・・・・・・。いつもどこに行っているんだろう、くらいは思う。もしかしたら、一人寂しく飯を食うのを見られたくないのかもしれない。そう考えたら少し笑えた。
自販機にヨーグルッチを買いに行くと、今日は珍しくあいつと廊下ですれ違った。いつもはなかなか昼に顔を合わすことなんかないのに。少し驚いて、その場に突っ立ってしまった。ぼーっとした頭で眺める。無表情で、携帯を見ながら速足で廊下を歩いていく。つまらなそうだ。いつ見てもそういう感想が浮かんだ。結局、あいつは一瞥すらなく。俺の横を通り過ぎた。
何でだか、手に汗をかいていた。








夕方、全く聞いていなかった授業が終わる(そもそも、教師の方もまともに授業なんてしないが)。二人の誘いを断り一人昇降口を出ると、携帯が鳴った。あいつからのメールだった。淡白な内容だ。今日は第二金曜日、連絡が来るのは分かっていた。メールに場所は書いてなかったが、あいつと落ち合う場所はずっと前に決めた。
そこに行くと、当たり前だがあいつはいた。やっぱり、携帯を見ている。いつも携帯をいじってるが、携帯依存症なのかこいつは。そのわりには楽しそうにしている風でもなくて、見てると微妙な気持ちになる。俺の足音に気づいたのか、顔を上げた。目が合うと表情はそのままに軽く手を挙げた。
何か言えよな。




第二金曜日と第四金曜日は二人で落ち合うと決めている。どっちかに用事がある場合は無理強いしないことになってるけど。・・・・・・でも、少なくとも俺からは拒否したことは今までない。あいつからもまだない。これからは、分からないけどな。
あいつが歩き出したので、俺もそれに続く。後ろをついていくのは傍から見たら変だったので、仕方なく横に並んだ。

俺とこいつは、別に友達なんかじゃない。人目につかない様に二人でこそこそ会って、仲良くする仲でもない。
俺達がこうなったのは、聖石矢魔に来てからだ。教室が一緒になって、今までより顔を合わせる機会が多くなったせいだと思う。小さな小競り合いが増えて、売り言葉に買い言葉というか、言い合いになって、気づいたらこうなってた(そう言えば、あの頃はまだ顔合わせたり、話したりしてたなあ)。
メールで落ち合った日は、あいつのマンションへ行ってまず二人でゲームをする。ゲームには、大して意味はない。どんなゲームでも、だいたい1、2時間で終わる。お互い必要最低限のことしかしゃべらない、盛り上がらない雰囲気でゲームは終了する。次に、風呂に入る。もちろん別々にだ。風呂の中まで重い空気とか耐えられん。俺はちょっとした準備がいるから、少し時間がかかる。(あいつは別の部屋の風呂を使っているらしい)風呂から上がると、ベッドにうざいバスローブ姿で腰かけて待っている。髪を下しているのは、何度見ても違和感。
短く声をかけると、無言でバスローブを脱いだ。













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