「ねぇ、神崎くん家ってどんなんなの?」


夏目の一言により姫川と夏目、城山はその日の放課後神崎の家を訪れることになった。





















「・・・まぁ、上がれよ」

神崎の言葉に姫川達は長い廊下を歩く。学校では連れて来ることをしぶっていたが、結局夏目と姫川に押し切られる形になった。
姫川と夏目はでかい平屋と長い廊下を物珍しげに眺める。城山は一人真っ直ぐ前を見て歩いていた。

「そう言えば、城ちゃんは来たことあったんだっけ?」
「あぁ」
「まぁ、こいつは付き合いが長いしな」
「さすが幼馴染ー」
「・・・・・・チッ」

神崎の言葉に、姫川は大きく舌打ちをした。嫉妬かな、と夏目に笑われて更に顔を歪ませた。

「てか、神崎くんの家・・・外から見たことはあったけど、やっぱ広いねー」
「てめえも、結構お坊ちゃんだよな」
「・・・そうかぁ?」

姫川の言葉に神崎は首を傾げた。本当に分かっていない様子だ。

「無自覚かよ・・・やっぱバカだなぁ」
「あぁ!?」

姫川が神崎に絡んでいると、夏目が横から茶々を入れる。

「姫ちゃーん、あんま神崎くんいじめない方がいいよー」
「はぁ?」

何でだよ、と姫川が首を傾げると意味有り気に笑った。

「神崎くんが家の人に告げ口したら、いくら姫ちゃんでもただじゃすまないよ」
「・・・・・・」

二人がそう話していると、神崎が眉を顰めて振り向いた。

「俺が、んなみみっちいことすると思ってんのかよ」
「俺は言ってねーぜ」
「あはは、ごめーん」
「・・・ふんっ」

そんなことを話していると、お目当ての神崎の部屋に着いた。
その広さに、またも夏目は目を見開いた。姫川は部屋をキョロキョロと忙しなく見渡している。城山と神崎はそんな二人を尻目にそれぞれソファとベッドに腰掛けた。もちろん、ベッドに座ったのは神崎だ。

「へぇ、けっこう綺麗に片付いてるねぇ」
「どうせ舎弟にやらせてんだろ?」
「文句あんのか。てめえもそうだろうが」
「いいえ、別にー」
「神崎さん、・・・何だかぬいぐるみ増えてません?」

城山の質問に、夏目と姫川もぬいぐるみを見る。ソファやベッド、棚の上といたる所にぬいぐるみが置いてあった。
神崎が見た目に反して甘党で、かわいい物も嫌いではないことを三人共知っていたがこの数には驚いたという表情を見せた。


「・・・・・・わぁ、ぬいぐるみだらけだ」
「てめえ、ここまでぬいぐるみ好きだったのか?」

そう訊かれると、神崎は大きくため息をついた。

「いや、嫌いではねーけどぉ」
「あ?」

言いにくそうな神崎に姫川は眉を顰めてみせた。

「二葉がよぉ」
「・・・二葉?」
「ゲーセンに行くと欲しいってきかねーんだよ」

今日は、姿を見せていないが二葉は神崎の姪っ子だ。そのじゃじゃ馬っぷりは石矢魔の面々に知れ渡っている。どうやら、その二葉がぬいぐるみを欲しがったらしかった。

「二人でゲーセンとか行くんだな」
「たまにはな」
「ふうん・・・」

姫川は面白くなさそうに唇を尖らせた。一応、神崎の恋人である姫川はとても嫉妬深い。それは神崎の側近である二人から特に接点のないクラスメイトにまで及ぶ。そして、どうやら今度は幼い姪っ子にまで目をつけているようだった。
鈍感な神崎は気付かないみたいだが、夏目と城山はやれやれといった様に苦笑した。





暫くして、部屋のドアがノックされたかと思うと強面の男が入って来た。

「若、客人にも飲み物を・・・」
「おー、そこ置いとけ」
「へい」

その光景を見て、姫川は大きく頷いた。

「そういや、お前ヤクザの息子だったな」
「今更かよ」
「いや、いつものてめえ見てると、こう、な・・・」

煮え切らない姫川に、夏目は横で笑った。

「はは、何か言いたいこと分かるかも」
「何だよ、夏目まで」
「だって、神崎くんかわいいんだもーん」
「はあ?」
「おい、夏目・・・てめえ」
「あははは」
「意味分かんねー」
「カオス・・・」

城山はため息をついて頭を抱えた。












暫くジュースや菓子を食べながら四人喋っていたら、夏目が突然立ち上がった。

「夏目?」
「神崎くん、お手洗い貸してくれる?」
「おー。・・・城山、案内してやれ」
「はい」
「・・・城ちゃん家じゃないじゃん」

そう苦笑しつつも、夏目は城山について行く。自分の家でも当然のように城山を使う神崎に、姫川も呆れた様な感心した様な複雑な表情をした。


「城山って、そんなてめえん家来てんの?」

夏目と城山が出て行ったあと、姫川は神崎に訊いた。その質問に、神崎はジュースを飲みながら答える。

「まー、それなりに」
「・・・・・・」

神崎はどうでもよさそうだが、姫川はやっぱり面白くなさそうだ。小さく舌打ちをして、側にあるぬいぐるみを徐に掴んだ。

「? 姫川・・・?」
「これ・・・」
「それがどうしたよ」
「これ、いつもここに置いてあんのか?」
「おう」
「・・・・・・・・・・・・」

ぬいぐるみをじっと見つめる姫川に、神崎は嫌な予感がした。軽く姫川を睨むと、早口で言い放つ。

「おい、ぬいぐるみ離せ」
「・・・何で」
「嫌な予感がする」
「・・・・・・」
「カメラとか盗聴器を仕掛けられそうな気がする」

いやに具体的な発言に、姫川はしぶしぶとぬいぐるみを元の場所に戻した。そして恋人からのあんまりな発言に抗議する。

「お前は俺を何だと思ってるんだ」
「変態だと思ってる」
「即答すんな。恋人を変態って・・・てめえはよー」
「本当のことだろ」
「・・・んなこと言うなら、本当に仕掛けちゃおうかなぁ」

額に青筋を浮かべ口の端をひくつかせながら姫川が言うと、神崎は真顔で返した。

「それが発覚した瞬間、別れるからな」
「わ、別れる!?」

ソファから立ち上がり大げさに反応した姫川に、神崎は驚くも呆れた表情を見せる。

「てめえが変なことしなきゃいいんだろうが」
「そうだけど!だけどだ!そ、それでも言っていいことと悪いことがあるだろ!!」
「うっせえなぁ・・・、冗談だっての」
「いやな冗談言うな」

そう言いながら姫川が神崎に抱きつこうとした時、夏目と城山が帰って来た。立ち上り両手を広げた状態で固まっている姫川に、二人は怪訝な表情をする。

「何やってんの、姫ちゃん」
「何をしているんだ、お前は」
「・・・・・・・・・・・・何でもねぇよ」

舌打ちをして、姫川はソファに座りなおした。それを神崎は鼻で笑う。

「バッカでー」
「・・・うっせぇよ」
「?」

神崎と姫川のやり取りに、城山は首を傾げる。夏目はだいたいの想像がつくのか、そんな二人を見て笑った。












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