休日、神崎が家に来るなり、姫川はポッキーの箱を突き付けた。
当然、神崎はポカンと大口を開け姫川を見上げる。
「・・・・・・え、っと?」
少しして、違うだろうと思いながらも神崎は訊いてみる。
「あー・・・、食いたいのか?」
その言葉を聞いて、姫川は黙って首を振る。
「なら何だよ」
いい加減何か言えと神崎は眉をしかめた。姫川はわざとらしくため息をつくと、ソファーに座る神崎の横に座った。
「今日は何日だ?」
「は?」
「何日だ」
「・・・・・・11月11日」
「で、何の日か知ってるか?」
そう言われ、神崎は考える。誰かの誕生日と言うわけでもない。結局、分からないと首を振った。
「今日はポッキーの日だ」
「ポッキー・・・」
言われて、そう言えばそんなのもあったと思い出す。同時に、下らないゲームのことも。
「やらないぞ」
姫川が何か言うより先に、神崎は冷たく言い放った。すると、姫川の眉が情けなく下がる。
「何で」
「きもいから」
「ひど。たまには恋人らしいイベントやろうぜ」
「食べ物で遊んじゃいけません」
「全部美味しくいただくからいいだろ!!」
「・・・・・・」
神崎はげっそりとため息をついて考える。
今日は泊まりに来た。まだまだ1日は長いし、明日も姫川のマンションでダラダラ過ごすつもりだ。ここにいる間、ずっと催促されたらたまったもんじゃない。
「・・・・・・・・・・・・」
神崎は無言でポッキーを一本取り出すと口にくわえた。
「神崎!」
「・・・一本だけだからな」
しかめっ面でそう言えば、姫川は抱擁せんばかりの勢いでポッキーに食らい付いた。