「ナオー」 彼はまた今日も暇な私の前にやって来た。 「おはよう、 …浮かない顔してどうしたの?」 「…また今日も白龍の奴、 迷宮攻略を断りやがったんだぜ?」 「嫌われてるんだね」 「うるせぇ!俺は天下のマギだ! はいはい、と私が軽くあしらうと 彼は不機嫌そうに横たわった。 「ここに誰かいたらお前、 無礼罪で逮捕されるぜ?」 「もう捕まってますから。」 「まぁな、」 「…第一ここにいたら マギの凄さとかわからないんだよね」 ムスッとしているジュダルが こちらを睨んできた。 私も負けじと彼を睨むと ジュダルはなにやら 杖を取り出して、一振りした。 その瞬間、 今まで壁に閉ざされていた薄暗い牢屋に 氷柱やら結晶やらが現れる。 ──私には一生観ることも ないような世界、 「キレイ…」 「こんなもんじゃないからな」 「他には!?」 「人も沢山殺せるんだぜ」 (あ……) 不意に変わったジュダルの目付きが 笑っているのに恐ろしく怖い。 これが彼の本性なのか。 「…ジュダルは今までに 沢山の人を殺してきた?」 「まぁな」 「そっか」 ジュダルが善人で無いことは 薄々気づいていた。 私だって 最初は殺されかけたのだから。 でも、 ───私にはそんなことどうでもよかった。 例え世間からはどう思われようと私にとっては、 (たったひとつの月) |