一人の護衛兵により牢の鍵が開けられた。


しかし食事では無い。






──ナオは今日やっと
人質から解放される。






人質として用済みのナオに対し近々
殺すことを視野に入れていた紅炎だが、


ある権力者により解放を
強く望んだ意見があった為
解放の決断をした。





…ちなみに権力者というのは、
この国の神官、だそうだ。








「こちらです、」





ついて行くままに階段を登ると、
やけに眩しい光が差し込んでくる。







──それは、数年ぶりの太陽。






まわりは光にあふれ、
温かかった。





すると、そんなナオに
一人の女性が近づいてきた。









「あら、貴女がナオさん?」

「はいっ…」



「ジュダルちゃんから話はきいているわ、
…私の相談役になってくれない?」


「ジュダルが…!?」


「そんなに意外かしら?

貴女を解放したのも
ジュダルちゃんなのよ。」




(あのジュダルが、私を…?)





意外だった。

彼ならてっきり自分をずっと
牢に閉じ込めておきそうだから。



(…まぁ、それでも全然構わないけどね。)

(というか煌帝国の神官だったのか…)










彼が自分を解放した真意は謎だが、

もう祖国の無いナオにとって
相談役として煌帝国に留まれるなら
これほど有難い事はなかった。


そしてきっとそれは
行き場のないナオの為に
ジュダルが用意した居場所。




それを察したナオは快く引き受けた。






「私にはもったいないくらい光栄です!」


「ナオさん、宜しくね」






そして護衛兵が、呼ばれているからと
再びナオを案内した。





案内された重厚な扉の先には、
豪華絢爛な王室が広がっていた。







そこには、見知らぬ男性の姿が。




男性が口を開いた。






----------
------
--







「本当にすまなかった、」


「…、」




全てを知った。


実はお父様たちは最後まで戦争を拒んでいたこと。

私を大切に思っていたこと。




ジュダルが、真実を隠したこと。






「…もういいですよ、紅炎さん」



それでもナオは微笑んだ。





「それを知れただけで幸せです。」





そして、
ジュダルが本当のことを隠した理由が
少しだけだがわかった気がした。




それだけで、十分だった─。







先程の護衛兵に連れられ
今度はナオの自室となる
部屋に案内される。




それは同じく豪華絢爛だった。




「ではごゆっくり、」







(いっちゃった…)






ナオはベッドに横たわる。

部屋にはナオ一人、
周りは静まり返っていた。



時がゆっくりと進む。







それは今までいた牢屋と
何一つ変わらない。



なのに、
なぜだろうか────。








「ナオ、」


「ジュダル!!!」






そうだ、こんなに温かいのは

───私はもう独りじゃないからだ。





いきなり現れたジュダルはそのまま
ベッドに横たわるナオの上に被さった。





「窓から来たの…?」


「ああ、」


「まったく…いつもいきなりだよね」





ナオは吹き出して笑った。




「待ってたよ、ジュダルのこと」

「そりゃどーも。」

「牢屋から出してくれて、有り難う」




ジュダルはバーカ、と言って
そっぽを向いた。




「…ごめんな、」

「なにが?」


「なんでも、だよ!」



「ふふ、変なの。」










ジュダルは、ふと彼女を
いとおしく感じる。





──なぜならその言葉が
彼女らしい、と思ったから。



嘘をついていたことを責められても
仕方がないと覚悟していたが。



俺の醜い欲を知って直、
彼女は受け入れてくれるのだろうか。






「ナオ、」

「…なに?」



「やっぱなんでもねぇ」






本当は

…できることなら、彼女をずっと
俺のもんにしておきたかった。

一生閉じ込めておきたかった。





でも、それ以上に俺は

ナオに笑っていて欲しい。




そのためなら、
俺は何処まででも堕ちてやろう。

彼女の分まで、どこまでも────。





ジュダルは彼女の頬に触れた。





そしてナオもまた、
ジュダルの手を包み返す。











──ジュダルの苦しみを共に背負う、


そんな想いで。






「私は、この流れに身を任せて生きてく。

…どんな流れになっても、
必ずいつか夜は明けるからね。」


「…?」




「だからジュダルも思うままに生きて。」






ずっと怖かった。

光の無い夜は冷たく、暗かった。

絶望に何度も泣いた。




でも、君が来てから
もうなにも怖くない。



辛い事実も君がいたから
乗り越えられた。





次また暗い闇が訪れてもきっと大丈夫、






それは、ジュダルも同じで。



どんなに道を間違えても、
必ず夜は明ける。



信じている、



ジュダルはきっと大丈夫だ、と。










そして二人は微笑み、唇を重ねた。






──互いの存在を確かめるように。


──互いの存在を受けいれるように。






──互いの存在に感謝をするように。














「ナオ、好きだ。」




「私も。」









そして、君がいるからもう怖くない。


君に出逢えて良かった。





この先も、ずっと、ずっと二人で──…


   ─────End Nights...
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -