──『国の為だ、頼んだよ』


──『ナオなら安心だ』


──『信じてるから』









仕方がない、と受け入れてきた。



だけど、今は───








「私はなんのために生きているのかな」



「ナオ、」


「分からないよ…」








──今まで独りぼっちで

皆を信じてきて、

なのに、




こんなことってある…?







ジュダルは彼女の周りのルフが、
黒く染まってゆくのを感じた。


それほどに身体の中の
何かが熱くなるのを感じた。







ジュダルはナオの頬に触れる。


溢れる欲望はもう自分には止められない。


ジュダルはそのままナオを
壊してしまいたい衝動に駈られた。





(このまま誰にも触れさせず、)
(俺だけのものに───)







───刹那





ジュダルの手に
なにか濡れた感覚があった。




ジュダルがナオの顔を覗くと
その目からは涙が流れている。




と同時に黒く染まったルフの
色が段々薄くなってゆく───





──ナオは迷っていた。




辛くて仕方ないこの気持ちは
全てを恨めば楽になる、

そんな予感がした。



それはたしかにそうだ、

でもナオの中で
ある小さな想いが生まれた。





"何もかも、憎むことが出来るだろうか?"




私はたしかに知っている。




なにも見えない暗い夜には、
月明かりがあることを。




運命の流れの中で、巡り合わせた
この青年との出逢いさえ
恨んでいいのだろうか。


今、自分の頬に優しく
触れてくれている彼を───



私に他人の温もりを
教えてくれた彼を───












「…いよ、」


「ナオ…?」



「運命なんて…恨めない」




ナオの中の

"疑惑"は

"確信"

へと変わった。





ナオのルフは次第に黒から
深く、美しい青に変わっていく。






そして、ジュダルはナオが
次に言った言葉に目を丸くした。







「ジュダルと会えた運命を
恨むなんて…無理だよ」


「ナオ…」


「ずっと独りで寂しかった。


だけど…
ジュダルに会えたから全部チャラ」



「本当にいいのか…?」



「私の運命も捨てたもんじゃないよ、」






そして頬にかざされている
ジュダルの手を
いとおしそうに掴んだ。







ジュダルの目からは自然と涙が溢れた。


 (夜はいつか終わる)
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