1





大きな光がぐわりと広がり、瞬きの間にそれは視界の全てを覆い尽くして炸裂した。
あまりの眩しさに思わず腕で顔を隠すが、何が起きたか理解する間も無く、俺は脳が割れて溶け出すような奇妙な感覚に見舞われる。そして、地面がなくなっていく浮遊感。




目を開ける。どうやら横になっている。…地面だ。土?
起き上がる。普通に立ち上がれた。体も問題なく動く。射手座の聖衣に損傷はなく、警戒を解かないまでもひとまず支障のないことに安堵する。

先ほどまで俺は、いや俺たちは、敵と相対していた。相手は黄金聖闘士に匹敵する実力者で、俺は双子座の黄金聖闘士であるインテグラと共に戦っていた。長引く前に片付けようと、俺とインテグラの小宇宙を併せて相手にぶつけたはいいが、誤算は相手もそれに匹敵するほどの力を持ち合わせていたことだろう。いや、瀕死だったからこそ最後の力であそこまで高められたのかもしれないが。
あの大きな光はその小宇宙の衝突によるものだろう。それが何らかの作用で俺をこの場へと吹っ飛ばしたようだ。共にいたインテグラの小宇宙は感じ取れない。少なくとも近くにいないのは確定として、生きているのかも確認できない。
ぐるりと今いる周りを見渡す。先ほど戦っていたときは森の中にいたが、ここは竹林のようだ。どことなく静謐で、崇高な感じのする。足元の土にはぽつぽつと小さな花が咲いている。何処かから風に運ばれて花の匂いがした。水の音がする。近くに水辺があるのだろうか。ここがどこだかわからない以上、生命線の確保は必要だ。湧き水のような場所があれば脱水する前に見つけておきたい。あるかはわからなくとも探すだけの価値はあるだろうと、音がした方向へ歩みを進めていると、唐突に強い念波を感じた。思考に直接コネクトするような、はっきりとした小宇宙。
『…星矢。射手座の星矢。これがわかるか?』
『…インテグラか?生きているのだな』
『ああ、こちらは無事だ。敵も先ほどの攻撃で倒したようだ。それで、最後の攻撃。あの大きな小宇宙の衝突によって、貴方は次元の狭間へと入り込んだらしい』
『次元の狭間…?』
『そうだ。私は次元の扱いに慣れているから間一髪免れたようなのだが、貴方の所在がこちらの世界から忽然と消えてしまった』
『つまり、別の世界にいると?』
『おそらくそうだろう。どの次元の地点にいるのか、場所さえわかれば私の力で入り口を繋げられるのだが、その特定に少し時間がかかるやも知れぬ。戻り方がわかったらこちらからまたコンタクトを取るから、それまで待っていてくれ』
『わかった、すまないが頼んだ』
フツ、と線が切れる感覚。インテグラのテレパシーが途絶えた。助けを待っているだけというのは心苦しいが、次元の操作に最も長けている双子座の黄金聖闘士であるインテグラが言うのならば、俺の出る幕などないだろう。とりあえずそれまで生き抜くためにも、ここがどこなのか特定することを最優先としよう。




≪ 

もどる



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -