髑髏の葬列を見た




夜更け、月も眠りについたころ。自宮へと戻る道すがら、人影が動くのが見えた。おやと思いそちらのほうへ向かってみると、墓の前に星矢が佇んでいた。
「悼んでいるのか」
いつもより少しばかり目を大きくしながら、ゆっくりと星矢がこちらを振り返った。
「…ああ」
星矢はわたしの姿を見てからうっそり睫毛を伏せると、また墓標に視線を戻した。

聖闘士の亡骸をしまうそこは、新たなものがいくつか増えている。どこを見るでもなく、星矢はそれらに視線を彷徨わせていた。誰かを想うというよりは、いつか自分もここに入ることを静かに受け入れるような、そういった佇まいだった。
肌を優しく撫でるように夜風が吹いている。包み込むような乾いた涼しさが間に通っていた。墓や地面や山々の灰色が群青に侵された中で、星矢の赤いシャツだけが異物のように目立った。

「まだ起きているのか?」
「眠る気になれなくてな。そういう時は、たいていここに来る」

吐息を相槌として、しばらく傍に居る気になった。別に他意もないが、ただ、この時間がひどく貴重に思えた。墓を眺める星矢の目が、とても優しく哀しかったから。


呼吸も同調して来る頃、ふと、星矢が墓のいくつかを指差す。

「あれがパラドクス。玄武。あっちにミケーネ、アモール…」
「…」
「お前は、彼らを見て…何を考えるんだ?」

こちらを見上げるように星矢が穏やかに問いかける。

「ふむ…」
彼らのことを思い出して、一考してからそれを言葉にしていく。
「人の一生なんてささやかなものに過ぎない。あなたがここに生きていることもまた奇跡であって、私だっていつかはここに眠るのだろう」

「…そうだな。うん。」

「だからこそ、何かを遺したいと思う。その先に待つものが確実な永遠の眠りであるとしても…それは、あなたの信じる女神に植え付けられた感情だ」

「……。」

「それに…私がいつかここに眠るときが来ても、こうやって貴方が来てくれるだろう。それだけで……、彼らは救われるはずだ」

眼を開いて、星矢のほうを見据えて、そう返す。星矢はふっと、寂しそうに笑った。

「…冷えてきた。寒い。」
「戻ろう。そろそろ寝た方がいい」
「…温めてくれないか?」

微笑みながら、試すように星矢が私の目を見つめる。まるで世間話のように滑らかに請われ、私は可笑しく思った。まったく彼はこういうところで奇妙に上手だ。

「貴方はもっと高潔だと思っていた」
「お前は言わなくても分かってくれるだろ?」
「共犯にしようと言うのか」

くすくす笑いあって、彼の腰をとった。
「人馬宮に」絶対に救いを請わない彼の傲慢さに、私はくらくらとおぞましい興奮を覚えた。





窓から星明かりが差し込んで、星矢の体を青白く照らしている。
ぐずついたそこに入れ直して、ふうと息をつくと、下で星矢が震えるように悶えた。星矢があつい息を吐いて熱を逃がすのを見て、それを無視するように中を抉る。たちまち星矢の眉が歪んで、助けを求めるようにこちらを見上げたのに満足して、快楽でしわの寄った眉間に唇を落とした。
いつの間にか触らずとも果てた星矢にきゅうきゅうと締め付けられて、わたしも火照っていくのを意識した。
「出してくれ」中に、と乞われてその通りにすると、星矢もまた満足したように、何かを終わらせたかのように笑んだ。

一呼吸のあと、直前まで自分の直腸に入っていたものだというのにも関わらず星矢はぱくりと私の萎えたそこを咥えた。
口で刺激されてまた硬くなると、星矢は精液のついたままにやりと笑って、今度は私に跨るようにして、また自分の下にそれをうずめた。
悦を貪るように腰を打ち付けて、また私も星矢も徐々に熱が溜まっていく。

星矢がうっとりとしたまま、おもむろに口を開いた。

「死が罰でないとしたら、忘れるのは罪かな」

懺悔するように星矢は言葉を吐く。こんな時に、いやこんな時でも無いと、彼は許さないのだろう。彼は許されないのだろう。自分の罪に恐れを抱くことに。

そのとき初めて気がついた。彼のすべては自罰だということに!
「貴方もほとほと救えない」
星矢は無邪気に笑って、「最高だ」と口にした。





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