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「最寄りのコンビニっていうと…駅のあたりか?」
「おれもそこでしか見たことないかも」

隣に立って歩きながら聞く。どちらにしろ駅の方へ行かないとなさそうなことは確かだったので足を動かした。歩いているときにいつもはもっと速く、というよりきびきびと歩く白竜がいつもよりゆったりと歩いているのがわかって天馬は少しだけ驚いた。

(白竜も、気遣ってくれるんだな)

じんわりと嬉しさがこみ上げた天馬が白竜のほうを見ていると白竜が『何だ?』という目で見てきたので慌てて話を逸らす。

「それにしても、暑いね」

ジャージを腰に巻き直した天馬が裾で汗を拭った。天馬の頬を伝う汗や火照って赤くなった横顔に白竜はどきりとした。いつも見ている爽やかな顔とは違う雰囲気を纏う天馬になぜか心臓が跳ねる。

そういえば、試合のときはそんなところを見る余裕はないし、普段でも自分は剣城たちと比べて、そして自分も天馬とはあまり関わったことがないから天馬のそういう顔を見たことがないのは当然といえば当然だった。
暑さのせいではなく少し赤くなってしまった顔を誤魔化すように手で扇ぐと天馬は不思議そうに白竜を見やった。

結局歩いてる最中にコンビニは見当たらず、駅前の広場まで来ることになった。店内に入るとクーラーの冷えた風が暑さを溜め込んだ体を出迎えて、ようやく天馬はほっと一息ついた。

「どれにするの?」
「まあ、ボックスのやつでいいだろ」

ぶらつくように店内を見ながらアイスや冷凍食品の入った冷凍庫を見つけた天馬が、ガラス越しに中の商品を覗き込む。

「これ?フルーツとソーダのがあるけど…」
「ミックスがいいんじゃないか」

言われて中からミックスタイプのアイスを取り出した。スティックのバーが個包装になって12本入っているもので、2つをカゴに入れる。

用も済みそのままレジに向かおうとする白竜の袖を天馬が掴み、少し悪い顔をしてアイスボックスから取り出したソフトクリームをカゴの中に入れた。

「またお前は…」
「いいじゃん、不動さんもお釣りいらないって言ってたし」

白竜もそれ以上強く言わず、そのままカゴをレジに出す。もらったお金で会計して、それでも少し余ったお金はやはり不動監督に返そうと思った。

店を出た天馬は白竜の持つビニール袋からソフトクリームを取って、かぱりと蓋を外すとそのままプラスチックの容器をコンビニのゴミ箱に捨てる。

「行こっか」
「ああ」
食べ歩きとは如何なものか、と白竜は少し思ったがそれを言うならさっきの時点で止めるべきだっただろう、と判断して口に出すのはやめた。
それと少し、口の端にクリームをつけながら美味しそうにアイスを舐めている天馬に口出しするのが野暮だな、と感じた節もあった。

「白竜も一緒に食べよう」

ずい、と目の前にさっきまで見ていたソフトクリームが迫っていた。暑くて疲れているのは確かだったし、つい誘惑に負けて1口もらうと天馬が嬉しそうに笑った。
これで白竜も一緒だ、と天馬は茶化すように言ったけれど、実のところ白竜が自分と同じものを食べてくれたことが嬉しかったのだ。

「えへへ」
「な、なんだ。俺が食べるのがそんなにおかしいか」
「そんなこと一言も言ってないだろー」

また天馬の口に戻ったソフトクリームが、熱でたらりと汗をかいた。






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