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出会ったのが数日前だと思えないほど俺たちはよく馴染んだ。まるで俺までここにいるのが当然のようだった。トランプで遊んだこともあったし、何故か雀卓があったのでわからないというクラに教えてやりながら牌を握ったりもした。サイが持ってきたwii?というのをやったり、クラのすまーとほん…というのをいじらせてもらったりもした。そっちは目がちかちかしたので向いていないようだったが。他にも、アモンに本を借りたり、サイに勉強を教えたり、クラに部活の話を聞いたりした。一ヶ月も経つ頃には俺もこの家の一部に組み込まれていた。
ルームシェア(というのも変だと思うが)での家事炊事は、俺がやらねばならないと思うことに他の明が着手することはなかったし、逆にやらなければならないことでも明がやってくれるとわかるものに俺が手をつけることはなかった。まるでそうなるように決まっているようだった。
ただ冷蔵庫から卵を使い切ってしまったとき、新しい卵を全員が買ってきてしまったのは驚いた。その日の夕食は大量の卵料理になり、それでも食べ盛りらしいクラは嬉しそうに頬張っていた。うちの食費は折半だが、クラは出せばいくらでも食べる。ただしそっちの了のところで色々食わせてもらってるらしいので、こちらとしても食費がかさまなくて非常に助かっている。まあ会えないし干渉も出来ないのでそれを伝える手段はないが。



実際にその人間を見たことはないが、体がこの部屋に馴染んできたころから、ここにはもう1人住むべきだった存在がいることを感じていた。ただしその存在がいなくても俺たちの生活は成り立っていたし、だがもしその「明」がここで暮らしたとしても俺たちは順応するのを理解していた。



一度だけ、明どうしのセックスを目撃したことがある。ひどく生々しくて、なんだか何かをじわじわと殺しているみたいで、見ていて気持ちのいいものではなかった。誰がしていたのかは忘れた。もしかしたら俺だったかもしれない。






出会って半年は経った頃、クラがこの家からいなくなった。誰も何も言わなかったが、漠然と『そのとき』がやってきたんだな、と理解したし、他の奴らも多分それはわかっていた。同居人がひとりいなくなってもこの家は変わらなかった。
クラが出ていってから少し経って、アモンもここからいなくなった。次は俺だということもなんとなくわかっていた。




やがて俺も家に帰ることが少なくなった。悪魔との戦争が激化したためだ。あの家で誰かがデビルマンだということは聞かなかったが、おそらく全員そうであって、同じ運命をともにしているということも感じとっていた。その明たちがどうなったのかは知らないし、もしかしたらあの明達は俺だったのかもしれなかった。

連絡や討伐に東奔西走していたが、悪魔との抗争中たまたま俺が住居を構えていたアパートの近くを通ることがあった。破壊されているビル群の中からあの家を探すと、そこには俺が暮らしていたあの安アパートが潰れていただけで、あの部屋の存在はどこにもなかった。





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