2





その話をしてから、翌々日。沙織さんが用意してくれた自家用ヘリで日本まで来た。
「テレポーテーションなら私も使えますが…。」
「体を休めに行くのに、それじゃ味気ないだろ。…まあヘリっていうのは俺もやりすぎだと思うが…。」
許可をもらいに行く時軽く話をしてから、気を使ってくれたのか諸々は沙織さんが全部手配してくれた。ギリシャの通貨から日本円に換金してもらうのとか、そういったことまで含めて。
朝呼び出しに行った時密かに安心したのは、フドウがいつも着ている袈裟姿じゃないことだった。どこにでもありそうな感じの、白いシャツとジーンズを着ていた。思ったまま「そういう服も持ってるんだな」と感心すると、「日本で袈裟は一般的でないと判断したので」と返ってきた。荷物らしい荷物もなかったフドウと一緒に数時間ヘリに揺られて、やがて大きな旅館に停まった。沙織さんが言うには城戸財閥系列の所だから多少の融通は利くのだと言われたが、ヘリでの送迎付きなんてどんな多少だ、とは言わないでおいた。
久しぶりの日本語でチェックインを済ませ、中を歩いていく。内部は外観のイメージ通り広々としていて、所々にポツポツと宿泊客がいた。
「日本語、喋れるか?」
「いいえ」
「じゃあ会話する時は俺を通してくれ。お前いかにも外国人って感じだし不自然ではないだろ」
フドウは素直に頷いた。今はギリシャ語で会話している、両方慣れたものだから俺も通訳くらいならできるだろう。
長い廊下を歩いていくと、やがてやっと客室に着いた。もらったカード型のルームキーを翳すと重厚なドアががちゃりと開錠の音を立てる。
「うわー…すげえ」
「広いですね」
「なー」
部屋がやたら離れてる時点で半ば予感していたが、やはりスイートルームのような感じだった。俺でも多分高い部屋なんだろうなってわかる程手が行き届いていて、広くて上品な部屋だった。まあ城戸財閥御令嬢直々の御手配だもんなあ、そりゃこうなるか、と少し納得してしまう。
荷物を置いてからベッドに寝転がってみると、想像した通りの柔らかさが体を包む。ツインの部屋だったらしく、ルームランプを挟んで横にもう一つ同じベッドが並んでいる。任務や沙織さんの付き添いで高級なホテルに泊まることもままあるが、だからってやはりそういった雰囲気に慣れることはない。こういうのはたまに味わうくらいでちょうどいいんだよな、とぼんやり考える。
やがて心地のいい微睡みのままに眼を閉じると、意識が緩やかに溶けていくのを感じる。…






 

もどる



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -