遥か遠くにある背中 | ナノ







風丸一郎太。この名前を知らないジャーナリストはいないだろう。
伝説の男、円堂守とは幼なじみ、大病院の経営者にして主医の豪炎寺修也と鬼道グループの社長の鬼道有人とは中学校時代の同級生、各メディアから注目されている俳優の吹雪士郎とは大のつく友人

………などと言うこともありスポーツ面以外にも注目されている。だが中には風丸を通して吹雪士郎のスキャンダルがあったか、鬼道グループは何を売り出すのかを聞いてくる輩も少なくない。

「風丸……一郎太さんですね」

「何のようだ、ジャーナリストなら帰ってくれ、嫌いなんだ……嘘ばかり書く」

話かけてきた男に風丸はそう吐き捨てると男は呆気をとられたらしくただ目を見開いて凝視する。

「いきなり名乗らずに話かけてしまっては英国紳士としてはマナー違反でした。エドガー・バルチナスと申します、お会いしたことを覚えて頂いていれば光栄です」

エドガーと聞いて風丸はFFIにいた選手を思い出す。風丸は小さく「あぁ、ナイツ・オブ・クイーンの………」と声を上げた、確かにあの頃とは変わらないが高飛車な態度は完全に消え、さらに落ち着いていた。

「記憶に留めて頂き、光栄です」
畏まった口調を崩さずにそう言った。
ヴェネツィアの空は徐々に曇ってきて薄暗くなってきた。

「貴方に少々、お話が……」

「俺に話…………?ここじゃ話せないのか?」

「ここでは誰が聞いているか分かりません、イタリアは物騒ですから」

多少の皮肉があるが風丸は大して気にならない。そしてエドガーの話そうとする事が深刻な話と理解した。すると風丸は急に周りの目が気になり四方を見渡すと、

「イタリアはいい人たちばかりだよ」

風丸が声のした方を振り返った、その先にはサッカーボールを蹴っているフィディオ・アルデナがいた。
どうやら子供達と遊んでいたらしく近くの公園からは小さな子供の声がフィディオを呼んでいた。

「久しぶりだな」

「ああ、守は元気かい?」

「………………」

風丸はそう言われて返答を返せない代わりに目線をそらした。フィディオは察したらしく黙り込んだ。

「私から………その事で話があります、さっき程も言いましたが誰が何処で聞いているか分かりません。この近くに私の別荘があります、ご一緒頂いてもよろしいでしょうか?」

「構わない、それで真実を知ることが出来るのなら………」

エドガーは頷き、胸ポケットから携帯電話を取り出し、即座に通話し始める。

「よく分からないけど…俺も行っていいか?何が一体起こってるんだ……」

風丸はただ同行することだけに頷き、エドガーを見る。数分後、フィリップが迎えのリムジンカーを用意して待っていた。


風丸は真実を早く目の当たりにしたい感情を抑えつつやけに長いリムジンカーに乗り込んだ。







遥か遠くにある背中

100905

……………………………

エドガーに何の革命が…



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