大切な旧友 | ナノ
風丸に会う1日前のことをリムジンカーの中でエドガーが遠くを見つめながら考える。
昨夜の晩のことである
エドガー・バルチナスは本を読み更けていた。夜ということもあり机に備え付けてある小さなスタンドライトだけがついてある。
「エドガー………もう寝た方がいいんじゃないか?」
エドガーの様子を見に来たフィリップがそう呟くと、エドガーはやけに聞き分けがよく、しおりを丁寧に挟んでやって机から体を離した。
「なんの本を読んでたんだ?」
「ルシェ……という女性が書いたサッカーの話さ」
「へぇ……エドガーが時間を忘れるくらい没頭する本か…珍しいな」
するとエドガーは少しだけ眠そうにしながらベッドに転がる。何も変わらない天井が実につまらない。
そんなことを思っていたらいつの間にか翌日になっていた。
頭が痛い………きっと昨日いつまでも本を読みふけ、いつもの睡眠リズムが崩れたせいだろうと、エドガーは自分の中で推測する。
「エドガー、もう準備できてるか?」
「あ、いやもう少しだけ待ってくれ」
小さくフィリップがノックする音でやっと目が冴えた。
エドガーは柄にもなく慌てて着替える、脱いだ衣服を畳まずベッドの上に散らかしクローゼットからスーツを取り出す。
「風丸一郎太がイタリアにいるのは確かだが、イタリアは広い………1日で捜し出すのは不可能じゃないか」
「確かにそうかもしれないが……これを届けなくてはいけない…」
ドア越しにエドガーはそう答えた。エドガーは本の上においてある封筒を手にとってそう言った。
なぜ自分がこんなことを引き受けたのか、多分自分が甘くなったからだ。
宛先は
風丸一郎太
送り主は
円堂守
大切な旧友
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エドガーは根はいい人だよ、うん