※アツヤ生存
鬼道がその日、ファミレスのテラスで見かけてたのは知り合いだがやけに異色なコンビだった。
「吹雪はかわいいと思う」
「異義なし」
「吹雪はエロいと思う」
「そりゃ兄ちゃんはエロいよ」
豪炎寺とアツヤはあまり見ない組合せかもしれない。同じFWでも一緒に練習している姿を見かけず、アツヤの場合は兄の士郎にべったりだ。
もしかしたらアツヤが一人で歩いている事自体が珍しいかもしれない。
「そこでお前に頼みがある」
「嫌な予感しかしないが、一応聞いておこう」
「吹雪を俺にくれ!」
豪炎寺も大胆な手を使う物だが、ブラコンのアツヤがそう人に兄を渡す訳がない。染岡と吹雪がこの前一緒に帰っただけで怒り狂ったあのアツヤがそう簡単に吹雪を譲るわけない。
「だめだ、兄ちゃんは俺のだから」
シンプルかつ独占欲に紛れた解答だった。だが今日の豪炎寺はいつも以上にしつこかった。
「俺たちの仲を認めなくば吹雪がどうなってもいい、そうゆうことだな」
「お前だけ問題に兄ちゃんは関係ない」
アツヤは勝ち誇っていた。どうあがこうとも双子の絆は固く、吹雪もアツヤを信頼している、だがアツヤはその分吹雪の信頼を失いたくない故手は出せない。
「吹雪を監禁するぞ」
「兄ちゃんに嫌われたいのかよ」
「恐怖の中から新しい恋ができるかもしれない……」
「……ねぇよ、どんだけ幻想的なおめでたい脳してんだよ」
アツヤは冷静にそう言った。アツヤの言っている事が普通に聞こえてくる。しかしファミレスでそんなアブノーマルな話をしてて注意されないのもある意味すごい、触れたら負けなのかもしれない。
「とにかく吹雪が欲しい」
「誰がやるかばーかばーか」
豪炎寺が変態というのならばアツヤはバカだった。この二人が手を組んだ日には吹雪の身がかなり危ないと見た。
「あれ、アツヤこんなところにいたんだ」
鬼道の後ろから吹雪士郎本人がやってきた。エコバッグの中には中学生が買ったとは到底思えない食材の数々であった。
「あ、あのな……これは…」
吹雪はきっとあの訳のわからない会話を耳にしたに違いないと鬼道は必死に誤魔化そうすると、吹雪はクスクス笑っていた。
「あの二人ってあんなに仲良しなんだ………なんか話し掛けづらいね」
「へ…?あぁ、そうだな…」
幸か不幸か吹雪の耳にはあの会話は届いていなかった。鬼道はホッとして胸を撫で下ろすのも束の間だった。
「せめて……じゃ吹雪の下着を一着………」
「…………はぁ……仕方ねぇな、お前には負けたよ」
豪炎寺はプライドを捨てて懇願した結果、アツヤは折れた。
二人が男の熱い友情を深めた時、話の中心…吹雪の顔から笑みが消えた。
「げっ………兄貴……」
アツヤは吹雪がいない時は兄ちゃん、と呼ぶくせに吹雪の前で兄貴と呼ぶ。今までアツヤは吹雪との信頼関係を築いてきたがそんな兄貴がアツヤの前に現われたときには時にはアツヤの人生は終わったも同然だ。
「えっと………これはだな…」
「吹雪弟が士郎の下着を欲しいとお前の下着を盗みたいと言っていた」
「ふざけんな、てめぇ」
あたふたはして自分の座っていた椅子を倒して立ち上がり、必死に誤解を解こうとしていると、横から豪炎寺が口を挟んだ、豪炎寺が吹雪兄を名前で呼んだことなど今のアツヤはどうでもいいことだった。
吹雪兄の顔色を伺えばまるで裏切りを受けたような顔をしていた、いや実際受けている。
「あ……あのな、違うんだよ兄貴!」
「あつやがそんなことおもってたんだ、ひどいよあつや」
すると吹雪はアツヤに背を向けて走りだすとアツヤは吹雪を追い掛けるように走りだす。
二人が去った後、鬼道は豪炎寺に言う。
「おまえもズル賢いな」
「吹雪とあいつが信頼し合ってるのを見ると腹立つからな」
鬼道が見た豪炎寺はすべてが悪者に見えたなんてことは怖くてとても言えなかった。
孔明の罠
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なんというgdgd………