「吹雪さん!」
元気を取り戻したシュートを決めた虎丸は嬉しそうに手を広げて待っている。ニコニコした笑顔が怖く感じるのは気のせいでないと確信する。
「あー………、えっと……」
「俺の胸に飛び込んで来て下さい!吹雪さん!」
自信に満ちあふれた顔は虎丸らしくていいが吹雪はどうしていいか分からない。
とりあえず飛び込んでみれば虎丸との体格差を感じた。吹雪はそれほど線が細かった。
「ほんと小さいですね、本当は女の子だったりしません?」
「しないよ!失礼だなぁ…」
さりげなく虎丸に胸を揉まれる。吹雪の胸はやわらかくはない、まな板のように平らである。虎丸はものすごく残念そうな顔をした。
「ないものはないよ……」
「わかりませんよ!」
「いやいや………」
「吹雪さん……女の子だったら俺と結婚してください」
話の展開が読めないのは吹雪だけではないはずである。はぁ?、と声が漏れた。
「早くにお嫁さんが決まれば母さんもきっと喜びます!」
「……………はい?」
「赤ちゃん産みましょう!頑張って下さい吹雪さん!」
ますます話の展開が読めない吹雪はどうしていいかわからないがただ一つ逃げられないことは知っている。
「残念だな、虎丸」
そこに現れたのは炎のストライカーと名高い豪炎寺であった。なんとも謎の言葉を吐きながら登場を果たす。
「吹雪は俺の子を産むという大事な役目があるんだ!」
「…!?本当ですか!!吹雪さんっ」
「言ってないよ」
豪炎寺は吹雪の手をそっと持った手前に言った言葉は
「ヤろう、吹雪」
「黙って豪炎寺君、っていうか本当にいっつもそればっかりだね」
「まぁ、あれだ、猫でいう『発情期』みたいなものだ」
「一緒にされた猫が可哀相だよ」
綱海は遠目で、どんまい!、と親指を立てて吹雪に意思を送る。送るだけであって近づいては来ない。
ヒロトは笑うだけでやはり近づいては来ない。
虎丸が元気と調子を取り戻した姿を見て飛鷹は少し戸惑っていた。
ひとたびの妄想を
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虎丸がかわいすぎたからやった、後悔も反省もしている。