よく間違えられるから慣れてます










アイチは良く言ったとしても「漢らしい」などと言われる形容は似合わないだろう。
それに加えて一般男子よりも少しばかり筋肉が足りないと言おうか、細すぎると言おうか彼は一回りばかり小柄である。それが決して悪いことではないが、アイチにとって身体についてどうこう言われるのはどうしても好きになれない。

昔から思えば同い年の子との体格差があったかもしれない。親がそう言う趣味だったのか、それとも幼少アイチに合う服が無かったのか、昔のアルバムの自分は今エミが好んで着そうな可愛らしく女の子物の洋服を身に纏っている姿の写真が頻繁にある。


それに加えて、父親よりか母親の遺伝子を濃く受け継いでしまったのかどこか中性的な顔立ちである。アイチを女の子と間違える人もいた位だ。






「アイチ君って、スカートとか似合いそうだよね」


ふと光定は思いついたようにそう言った。彼は余程良いことを言ったのか嬉しそうな無邪気な笑みを浮かべて、アイチに迫る。

決勝戦間近で確かに控えに入っていて、デッキチェックしながら緊張を抑えることくらいしか出来ない。よりによって同じ場所で相手チームとコンディションを確認するような形になり気まずくなっていたものの、多分何も考えていない光定の発言でその緊張感は無くなった。
しかし話題の振られたアイチ本人にはあまり嬉しくはない内容につい苦笑いをする。


「皇帝? それは流石に失礼だわ」


そう透き通るような声で光定を咎めたのはユリだ。彼女は腰に手を当てて無邪気に目を輝かせるリーダーにそう言う。続けて弟のガイがユリの言葉にうんうんと同意するように頷くも彼は悪気ない笑顔を振りまき、何が自分の発言に否があったのかまったく理解していない素振りだ。


「だって似合いそうなのは事実だろう? ………櫂くんもそう思うよね」


よりにもよって一番その手の話題を振ってはいけないような人に振られてしまった。櫂は自分でそういうアイチ関連のイメージするのは構わない人間だが、そういうアイチに関するふしだらなイメージをする奴は敵と見なすなんとも矛盾に満ちた人間なのだ。

カムイやミサキはそれを知ってるが故、その地雷を何も知らずに踏んでしまったことを哀れに思う。


「ああ、そうだな………似合わない訳がないだろう」


櫂君!とアイチが頬を赤くして、止めようとする。アイチはきっと櫂ならば「くだらん」などと吐き捨ててこの話題を止めてくれると思っていたからだ。

しかし本人はまったく悪気もなくそう自信に満ちた声でそう言い除けた。


「やっぱりそう思うよね、アイチ君は可愛いからね」

「ああ、知ってる」


きっとこの光定の無邪気な笑顔は彼のファン達を騒がせるには十分すぎるだろう。しかし、笑顔になる理由があまりに残念な話題である。
アイチが最早止められない、もしくは足の踏み込んではいけないような話をし出したところでユリは「ごめんね、先導くん」と申し訳なさそうに言ってくる。


「後できっちり絞っておくから、あの変態」


そうユリは指をゴキゴキと恐ろしい音を関節から響かせて、ついアイチは萎縮する。このままでは光定の生死が危ういと思ったアイチはユリに「なれてますから、ああいうの」と控え目に言った。







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光定と櫂君とやたらマニアックな話をしだしそうだよね

素敵なお題ありがとうございました!



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