イメージ大爆発 ※キャラ迷走と崩壊につき、注意 もしかしたらこのメンバーで集まっているのはなんとなく珍しいのではないかと考えた。 ミサキとエミの策略によって愛しのアイチを取られてしまったのだ。 元は皆で買い物にと隣町のデパートに遊びに来たはずなのだが、やはり男女の壁は越えられないのかアイチを取られて、見るところもなくなった男達はデパートの中に入っているファミリーレストランにいた。 「話が違うぞ」 ふてぶてしく声を上げたのはアイチのボディーガードでお馴染みの櫂トシキである。すでに苛立ちの声を上げながら手元に届いた日替わりランチに手を付けていた。 横に座る三和はただ苦笑いをするだけで言葉は出て来ない。 「お兄さん、今頃何してるかなー……」 「もうお昼になりますし、他の物でも食べてるいるんじゃないですかね」 カムイと店長は思い思いの会話を交わしていた。 櫂は三和にアイチとデート出来るぞ、と唆されて来たようなもので後の展開はまるで予想していなかったのか、それともアイチとデートが本気で楽しみだったのか……櫂の機嫌は周りさえ声を掛けづらいほど悪い。 「にしても店員のねーちゃんは何でアイチまで連れてっちゃったのかね……」 「ミサキはアイチ君を弟みたいに思ってますからね、ミサキは一人っ子ですからアイチ君やエミさんの世話を焼きたくて仕方ないんでしょうね」 店員は嬉しそうに三和の質問に答えるものの櫂は腑に落ちないらしい。 カムイは大分理解できるようでエミやアイチと買い物する夢に関することに決着がつきかけているようだ。 「家にアイチを持ちかえるまでのプランは完璧なはずが……」 「お前なぁ……」 頭を抱えはじめた友人につい三和は頭が痛くなる。何でお前はアイチがいないところだとそんな元気なんだよ、本人喜ぶから試しに言って来い、と言いたくなるものの口に出したらいけない気がした。 「それにしてもミサキさんやエミさんはお兄さんを何処に連れ回してるんだろう……」 「二人ともお年頃ですから、ブランドの洋服とか見てるんじゃないですかね?」 「ねーちゃんもエミちゃんも洋服好きそうだもんなぁ……、アイチも女子と間違えられて試着させられたりして」 冗談にならないような事につい全員が生唾を呑んだ。あの容姿に華奢な身体だ、身長もミサキより小柄でパッと見ただけではどちらか定かではない。 「あ、アイチお兄さんなら……きっとワンピースとか似合うんだろうな」 「何言ってんだよ、ゴスパンクだよ、ゴスパンク………アイチに一度で良いから着てほしいんだよな」 「チャイナなんかも捨てがたいです」 各々勝手にイメージを膨らませては良からぬことを考えているのかみっともないような恍惚な表情を浮かべている。 周りの客やウェイトレスには見られていないが、あまりに見せられないような状態である。 バン、とテーブルを叩く音につい三人は我に帰ったらしい。テーブルを叩いた張本人である櫂を見る。 「お前達、イメージしろ」 櫂は低く押し殺した声で名言を放つ。イメージと言う名の妄想を邪魔されて櫂を見たもののつい気迫で櫂の言うとおりイメージしようとする。 「メイドとしてアイチが俺達に奉仕している姿を!」 櫂の名言は偉大である。 そう言い放たれた瞬間に頭の中に実際のメイドが着用しているものではなく、どちらかと言えばコスプレなどに属されるような衣服を身に纏ったアイチが浮かび上がる。必要以上に短いフリル付きのスカートから伸びる脚は純白のニーソックスが装備されていると言った具合で、イメージの中とは言え恐るべき破壊力だ。 アイチはきっと不安気に顔を上げながら、恥ずかしさを噛み締めて「ご主人様…」と言ってくれるだろう。征服感が満たされてしまうであろう、彼は命令すれば一度拒むものの最後は従順に言うことを聞いてくれるのだ。 櫂一同がそんな妄想をしている最中、アイチ達は何件もブランド服の店をハシゴしていた。 「アイチもほしいのあったら、言ってね」なんて言うもののどれも女の子向けである。 「………ッ!?」 エミ達が見立てた服を持たされた直後、背筋が凍るように身体が跳ねた。 「どうかしたの、アイチ」 「何か、寒気がして…」 「アンタ寒いの?」 「そういうのじゃなくて……身の危険を感じたと言うか…」 アイチは両手で自分を抱いていると顔を見合わせたミサキとエミは何となく察したのであった。 |