アナザーワールド・アナザーデイ






※色々な物に感化されています。
完全なるパラレルな話なので注意してください






自分が不穏ながら目を覚ますといつも通りの天井がある。そっと寝返りを打って見ると家具の位置も何も変わっていない自分の部屋がある。

重い身体をのそりと起き上がらせると何と言おうか、唐突な頭の痛みに襲われた。その痛みは昔学校に行きたくなかったからのものでは無く、どちらかと言えば病気類で痛くなるような、頭を強い力で握られているような気分だ。
額には薄ら汗をかいている、夏場ではない。むしろ季節は秋に向けて着々と準備は整いつつある。なのにも関わらずこの汗は一体なんなのか、そう問いただしても答える者がいないのだ。

アイチはカーテンから漏れる眩しい朝日と対面する時と同時に思い切りドアは開いた。


「アイチ、朝ですよ……」


そこにはいつものあの黒ずくめな格好からは想像できない生活感溢れるワイシャツに下が見たことある色みのズボンを着用している。
アイチはどうして良いか分からずレンを呼び止めようとしたが意外に早い足取りで階段を掛け降りたせいで無意味だと気付いた。混乱からか情報処理は全く間に合ってなどいないのだ。

デジタル時計付属のカレンダーを確認すると確かに『今日』だ。紛れもなく昨日から直結されている『今日』なのだ。

不穏と色んなものを確かめたい気持ちを抑えながら昨日と同じ階段をゆっくりと降りてリビングに行く。するとレンは優雅に紅茶を啜りながら「遅いですよ」とアイチを咎める。

レンの隣に空いている席には洋風な朝食が並べられている。そこに座って箸を持つ。食べ始めるもののあまり食は進まない、まるで他人の家で朝食を取っているような気分がするのだ。
この家には自分とレン以外人気はない。何かと騒がしいエミもいつもキッチンに立っているはずの母親の姿も声もない。


「………どうかしました? 顔が真っ青ですよ」

「なんでも、ないです」


心配そうな眼差しを向けてくるレンにある種の恐怖感がある。アイチの知る『雀ヶ森レン』はこんな人ではない。
食べる手を止めたアイチの背中を優しく撫でる。少なくともアイチに感心が無ければ出来ないことをしてくるレンについ戸惑った顔を向けると彼は不思議な物でも見るような目の色をしてアイチを見た。


「まぁ僕だけでは不安かもしれませんけどね、両親に妹まで揃って海外出張なんてね」

「…海外…出張……」


読めない展開に目を見開いてしまう。レンは何を言っているのか、分かっているようで頭の中の整理は何一つ付いていないのだ。
穏やかな顔をしてここに居座るレンに「どうしてここにいる!」なんて聞く勇気はない。喉元まで声は出掛かってはいるものの、それをはっきり声にすることは叶わない。


「まだ寝呆けているんですか、いい加減起きて学校行く準備してください」

「あ、はい…」


ろくに朝食を取らずにレンに制されて立ち上がり自室へと早足で戻る。
まず暗がりの部屋に入ってからカーテンを思い切り開けて外の憧憬を眺めた。そこには大した代わり映えはなくいつも通りの晴れやかな朝がそこにはある。
青ざめたアイチは次に学生カバンの物を引っ張り出して確認する。通う学校も学年もクラスも番号も名前も変わりはない。やっている単元も昨日から受け継がれている。制服にも何も変わりはなく灰色の学ランもどきだ。

とりあえず意味が分からないまま制服に袖を通すしかない。袖を通せば何かが分かる気がしたのだ。


「アイチ? 支度は出来ましたか? もうそろそろ櫂と三和が迎えに来てしまいます」


櫂君と三和君が?
と唱えながら気になって仕方なかったキーワードを思い返す。アイチがいつもの制服に袖を通し、勢い余った様子でドアを開けるとそこには櫂達の通う高校と同じ制服を身に纏うレンがいる。その姿につい呆気を取られて固まる他ない。

呆気を取られていてほんの数十秒。すると陽気な電子音は家に響き渡る。この音を聞いたレンは大きなため息を付いてアイチを見る。
「ほら、来てしまった」そう言いたげな目だ。一体二人は何をしたと言うのだと、アイチはレンに促されるまま玄関にくる。
するとインターホンを連打しているのか凄まじく電子音は鳴り響いて止まない。


「おっはよう、先導兄弟!」

「おはようございます、三和いつもいつもこのような事をして嫌がらせか何かですか?」

「カッてぇな、先導兄! それに比べてアイチは可愛いなぁ、性悪な兄ちゃんと本当に同じ血が流れてんのかよ」


三和が言った『兄弟』という単語に少なからず衝撃を得た。自分がレンと兄弟ということに驚く。だがアイチはレンが自分にこうも優しくしてくれる理由が少し理解出来た。同時に二人はあまり変わらないことにアイチはほっとしてこのやりとりを見た。


「アイチ」

「あ、櫂君…おはよう」

「……」


アイチがいつも通りに挨拶を交わすと櫂の顔色は変わった。おまけに先ほどまで口論を繰り広げていた二人も目を丸くしてアイチに視線を注いだ。
まるでアイチが普段のアイチとは別とでも言いたげだ。


「珍しいな、アイチが櫂を櫂君って呼ぶなんてな、お前アイチになんかしたのか?」

「別に…」

「今日の朝から変なんですよ、すぐ驚いた顔をする」


何に対し首を傾げているのかアイチには分からない。
むしろこちらが首を傾げたいくらいだ。櫂のほうに助けを求めるように目を合わせるものの櫂はあまりに悲しげな顔をする。アイチは少しばかり表情が豊かになった櫂を見て新鮮に思う一方で「いつも彼らをどう呼んでいたのか」それが全く分からない、聞けばきっと話が更にややこしいことになるだろうからあまり言いたくはない。

「えっと……」

「いつものおまえなら俺をトシキと呼ぶ」


今更名字呼びなんてな、とかぼやきながらアイチの知る櫂のように制服のポケットに手を突っ込んでいる。それにしてもアイチが櫂を名前で呼ぶなどと言う発想はあまり無かった。関係はどうあれ年上の憧れの人を許可なく名前で呼ぶのはおこがましいと思ったからである。


「アイチアイチ!」

「な、何? タイシ君……?」


まるで手探り状態で後ろから抱き付いて来た三和にそういった。櫂を名前で呼ぶならば三和のことも名前で呼ぶだろうという推測からの学習を元に不安たっぷりに呼んでみると彼は嬉しいらしく、更にアイチを抱き締めた。


「やっぱ俺のことは忘れてないんだなぁ、櫂、やっぱお前なんかしたろ」

「してない」

「僕がそんなことさせませんから安心して下さい、櫂。それに三和、僕の可愛いアイチから離れなさい」


三和からとっさにアイチをひったくりレン側へと寄せる。近くを通る学生は「またやってる」とか「相変わらず三人共格好良い!」とか「アイチは今日も可愛い!」とか色々な声が聞こえてくるところを見るとどうやら日常茶飯事のようだ。


「アイチ、行きますよ……」

「あ…はい!」


謎は多い上に全く分からないこの世界は夢なのか、それとも現実から離れたパラレルワールドという世界なのか。アイチには検討も付かない。
とりあえず三人に囲まれるまま、いつもの通学路を辿るのだった。








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書いてて自分でも意味が分からなくなりました、あれ?
とりあえずアイチが元々いる世界とは違う平穏な世界に来ちゃうような、そんなお話

お察しの通り感化されてます、すみません


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