純愛サイコメトラー 日に日に風は熱風からただの冷風となり夏の日差しは消え失せていた。 木々が色付いて、その下を通る学生達の制服はいつのまにか薄着で涼しげだったものからすっかり一新して暖かそうなものへとなっていた。流石に半袖でいるには辛い季節になって来た。アイチは北風が吹くたびに寒さを実感している。 今日はカードキャピタルに行くと言う誘いを断り一人公園にある池のほとりで黄昏ていた。夏場は子供で賑わいを見せていた公園も大分寂れていた。日の落ちも夏に比べて早くなったからであろう。 アイチの周りには見渡す限り誰もいない、聞こえてくるのは水が流れる音だけだ。 「いつもこんなところでこうしてるの?」 気だるそうな声が頭から降って来てアイチはすかさず顔を上げると学校帰りなのか鞄を持っているミサキが立っていた。彼女もまたブレザーを着用してすっかり春に会った時と同じ格好になっていた。 「ミサキさん……、どうしてここに?」 「ああ…通り掛かったら見たことある後ろ姿あったから声掛けたんだ」 ミサキは微笑みいつもより柔らかい口調でアイチに話掛けた。アイチはここでぼんやりしていたことが何となく気恥ずかしくなってつい苦笑いをしてしまう。 一人がいいとか、アイチはそういう訳じゃない。カードキャピタル以外の自分はあまり皆に知られたくないからだ。 「今日は来ないの?」 「えっと……」 アイチは事前に森川達の誘いを断ったせいもあり今から行くのは何となく気が引けてしまう。言葉を濁していた。 「まだ落ち込んでるの?」 「僕はみんなに迷惑ばかりだから、強くならなくちゃ……それに」 「私はアンタにそうされる方が迷惑、アイチだけのせいで負けた訳じゃないだろ?」 彼はまだ背負い込んでいる。 全国大会でそれほどまでに胸を抉られた暴言はあまりに残酷だろうし、あの場で雀ヶ森レンに罵倒されたのはアイチだけだ。 それが言い方は悪いがアイチを余計傷付けたのだろう。ミサキも聞いていて怒鳴りたくなるほどだ。 「たまに思うんです、皆の足引っ張って捨てられたらって」 「…………」 「すごく、後ろ向きって分かってるけど……」 アイチが話している途中でミサキはアイチを無理矢理立たせた。腕をありったけの力で掴んで公園を出る。 「……み、ミサキさん?」 「なら特訓するよ、いくらでもアイチの特訓に付き合うし」 「……そんな、悪いですよ」 「アイチがいないと私も調子でないから」 ミサキはアイチに顔を向けないままカードキャピタルに向かって歩く。アイチはミサキの発言に少し驚いた後に微笑みを浮かべて「ミサキさんありがとう」と言った。 するとミサキは一層アイチを掴む腕を強めてただ「ほら、いくよ」とだけ言う。 早足のまま二人は皆のいるカードキャピタルへと入っていった。 |