病めるときも健やかなるときも ※櫂とアイチは出てこない櫂アイ 女性向けのファッション雑誌は多く存在する。 中でも大手とかメジャーとか言える雑誌に何やら引っ掛かる記事があり、その日のうちに買って来たファッション雑誌を店のカウンターで一人ミサキは熟読していた。 「あれ…珍しいな、店員のねーちゃんがファッション雑誌読んでるなんてな」 「読んじゃ悪いの」 「いえとんでもない」 今日のカードキャピタルはやけに違和感がある。 と言うのも櫂はともかく、アイチまで来ていない。森川や井崎は来ていて、三和も一人でひょっこりと顔を出すことが多くなっていた。なんというかそれぞれが二人いない理由を暗黙に了解しているような状況だ。 「あのさ」 「んー?」 「これってアイツ等にしか見えないんだけど、どう思う?」 三和がなんだよ、と思いながらミサキに提示された雑誌を覗く。 そこはいわゆるカップルさんに街角インタビューするような有り勝ちなコーナーに一際目立つ煽り文と共に写真がある。 三和は眉間に皺を寄せた。 それは怒りからではなく、嘘であって欲しいという願望と切望からだ。 櫂は女子から意外と支持されている。見ての通りファイト中の悪い顔さえなかったことにすれば、絵に描いたような美形の部類に入るだろう。 この雑誌を読んで櫂に可愛らしい彼女がいたなんて知ったら、恐らく彼を好いていた女子達は櫂のことで相談役になる三和の前で何度も悲劇のドラマが展開されることか数知れない。 だがその願いも叶わないらしい。 写真に写っているのは、本日ご欠席されているバカップルある。 「俺たち結婚しました」的煽り文が似合いそうな幸せ絶頂の二人がいる。 「ああ、あの二人だな、今日いないあの二人だな」 「だよね、あいつら何してんだか」 「つかインタビュー受ける奴かよ、アイチはともかく櫂は」 「私もそう思ったんだけどさ」 ミサキが指す雑誌には長々と質問が書いてある。櫂こそ仏頂面を張り付けているがアイチの肩を優しく抱き寄せる写真は明らかに甘い空気が伝わってくる。 「こいつらにインタビューした奴、勇者だな」 三和は砂糖を吐きそうなほど甘い二人のインタビューした奴を可哀想にと思う。どうしてこいつらに声を掛けてしまったんだ。 ミサキは雑誌を閉じて「そうゆうこと、呼び止めて悪かったね」と三和にそう告げる。 「そうだ…櫂の奴、変わったんだよ」 「なんの話だ!」 三和とミサキの間にずいっと割り込むようにして話に入って来たのは二人のように苦労しているカムイだ。腕組みして三和に話し掛ける。 「アイチといっつも登下校してんだよ、高校の方が先に終わるからいつもアイチの学校の前で待ってるみたいでさ」 だから俺はぼっちだよ、と肩を落としてため息をつく。からかうにもアイチの話題を出せば惚気ばかりで面白みがなくなったらしい。 カムイはそんな話を耳にしたら苦笑いで目線を反らす程度の気遣いを見せる。 「とりあえずアイチも元気なんだしアイチに危害加えなきゃいいんじゃないの?」 「お兄さんになんかした時は櫂の野郎をぎったんぎったんにするしかないな!」 昼下がりのカードキャピタルで静かに同盟が出来上がる瞬間に噂の二人がカードキャピタルに立ち寄りに扉の前に立っていた。 |