強者達の意地



アイチは確かに初心者だった。
この頃ヴァンガードを始めた典型的な初心者だが、意外にも彼は短期間にも関わらず着々と実力をつけていつの間にか店の中でも肩を並べるほどである。

卑屈な本人は自分をやはりへり下るだけだがあのカムイに少しの差であった、カムイでさえ驚くほどに。


「アイチ、そんなに落ち込まないの!」

「うん、わかってるんだよ、エミ……でも悔しくて」

「わかるけど………」


今日ばかりはエミでさえ強く言えなかった。
ルールはよくわからないし、何が凄くて何が強いのか……、誰かの口で説明して貰わなければ分からない。しかし今まで弱音ばかり吐くアイチがここまで真っ直ぐ前を見て戦ったことはエミからしても誇れる兄に感じた。

そんなアイチにエミはなんて声を掛ければ良いのか分からない。
狼狽えるようにして周りを見渡しているとアイチの頭をくしゃりと撫でた人物がいた。


「………櫂…君…?」

「お前にしては良かった、仇はとってやる」

「何だよ! 俺様が悪い奴みたいじゃんかよ!」


櫂は不器用にもアイチの頭を撫でながらそんなことを言っていた。
勿論、少なからず櫂の中では悪者となっているカムイは黙っているはずはなく騒ぎだした。


「良かったなぁ、アイチ! 旦那が仇とってくれるってよ!」

「お前は少し黙れ」


三和も調子に乗ってアイチにそう声を掛けていると櫂に一発額にデコピンされるのであった。


「いいぜ、櫂ぃい! アイチお兄様の前で盛大に恥かかせてやるぜ」

「ふん、望む所だ」

「じゃ、じゃあ決勝戦を始めますよー…」


二人の妙に熱い敵対心に新田はやっと入り込むすきを見つけてそう言った。
当のアイチはどうしていいかわからずにただ目を点にして佇むことしか出来ずにいるのだった。









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櫂君が負けたアイチを励ましたら可愛いという妄想


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