飛鷹は困惑していた。
ただ夜に気分転換をしたくてこっそり宿を抜けて散歩していた。

決勝戦が近づくに連れて失敗できないプレッシャーや緊張感が高まる。
しかし飛鷹は元々プライドが高い方でキャプテンの円堂ですら相談しづらかった、それでなくてもピリピリしているのかそんな悩みは笑われてしまいそうな気さえしてならなかった。


グラウンドがまだ光を差していることに気付き、とりあえず気になった飛鷹はグラウンドへと足を進めた。




凄まじい轟音に響き渡る声、そっと覗くとそこには予想できないほど小さな身体がそこにある。

肩で息をして、滝のような汗をかいて、ユニフォームは泥だらけ。
どれだけ彼が練習に打ち込んで居たかが浮き彫りになって姿を現わしていた。


「飛鷹君……?」


いつの間にかかなり見入っていたらしく容易に彼に気付かれてしまったのだ。
吹雪は照れくさそうにしていた後に飛鷹をグラウンド内に呼んでベンチに座らせて、吹雪も自前の水筒の中に入る水を飲みながらベンチにどすん、と腰を下ろした。


「練習してるの意外でした、吹雪さんは全然そうゆう素振りとかないので……才能かと思ってました」

「そんな訳無いよ、そんなに意外かなぁ?」

「あ、そうじゃなくて…何となく、練習って言ったらキャプテンが率先してるイメージがあるので」


飛鷹は吹雪の顔を伺いながらそういった。
吹雪はよく分からないからだ。

円堂のように熱血漢でも、豪炎寺のような感情を表に出すタイプでもない。
かと言って不動のように孤立している訳でもなく、不思議な存在だった。


「怖いんだよ」

「…え……?」

「次は決勝戦だし、変な失敗してチームに迷惑かけられない…、失敗ばかり考えてちゃ駄目なんだろうけど不安でね」

「吹雪さん……」


いつも知ってる彼ならこんな弱音ははかないだろう。横に座る彼は特別小さく見えた。
不安そうな顔色を浮かべる彼がとても小さく見えて仕方ない、試合中には見せない顔だった。


「らしくないですね、吹雪さんってもっと堂々としてるのに」

「見えるのは表だけ、ね………」

「………」


またこんな弱気になってたら豪炎寺君達に怒られちゃう、と言いながらまた立ち上がって近くにあったボールをまた蹴りだした。


「練習しないと落ち着かないんだよ、ボールを蹴ってないと不安なんだよ」

「キャプテンと似てきましたか?」

「そう? 僕、キャプテンみたい?」

「サッカーバカなところが……」


なにー!、と声を上げる吹雪は飛鷹を見て少し怒ってみた。
そして飛鷹自身も吹雪に釣られてサッカーボールを蹴飛ばし始めた。


そして自分も人の事言えないサッカーバカ何だと感じた。






俺の知らない貴方




飛鷹と吹雪の話が書きたくてついやりました
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