クリスマス色に染まったイルミネーションだらけである。昼間でありながらとてもロマンチックで、生憎恋人達には昼間も夜も関係ないらしく周囲が見えていない様子でただいちゃついていた。

吹雪はそんな街の中をマネージャー達に連れられて歩いている。雷門ジャージにマフラーという簡単な防寒はマネージャーのコートには劣るだろう、服の隙間からの風が肌を撫でる。


「それでなんで僕だけ?」


いつも通りの爽やかな口調で4人のマネージャー達に話掛けると微笑んでいた。

「あなたに選んで欲しい服があるのよ」

「そうです、お兄ちゃんったら全部似合うとしか言ってくれないし!」

「……そうだよね、折角のクリスマスパーティーはお洒落したいよね」


夏未や春菜はそう述べると吹雪もやっと納得がいく答えが返ってきたらしく寒さで頬を染めながら頷いた。

「みんなクリスマスパーティーの準備で忙しいのに僕だけいいのかな?」

「いいのよ、吹雪君は気にしないで」


吹雪が少しだけばつが悪そうに俯いているところを秋が速攻にフォローする。
秋達はただ吹雪を外に連れ出し時間を稼ぐように言われただけで服を選んで貰うなどはその場しのぎの言葉でしかない。




一方円堂達はクリスマスパーティーの用意を虎ノ屋を貸し切り準備している最中である。

そして現在は全員が共同戦線を張り、話合いの場となっている虎ノ屋は緊迫した空気が張り詰めていた。


「俺たちが吹雪の為にしてやれることはなんだ、フィディオ!」

「もちろん、クリスマスを知らない士郎にパーティーを開いてあげることだよ」


円堂はいつも以上にピリピリした空気の中、口を開いたと思えばフィディオにいきなり質問を振る、フィディオもフィディオでその質問を簡潔に返答した。


「例えば何だとおもう、アフロディ!」

「とりあえず、プレゼントや料理を作ってあげれば喜ぶと思うよ」

「それだ、他に意見はないか!」

「なら晴矢とヒロトとリュウジが綺麗なイルミネーションの周りを褌一つを身に付けて『ウホウホわっしょい』と口々に叫びながら走らせるのはどうだ?」

「そこ、真面目な顔して奇妙は祭りを作るな、大事なクリスマスを変態の儀式なんかで終わらせねーぞ」


涼野の発言で隣にいた南雲はおもいっきり襟首を掴み涼野を揺さ振っていた、しかし涼野はなお無表情である。

円堂が的確な突っ込みを入れながら対応していく。


「とりあえず最後の話は置いといて、料理とプレゼントでいいんじゃないか?」

「ああ、それが一番だと思うぞ」

炎のエースストライカーと帝国のゲームメーカーは相変わらずの仏頂面ながらそう意見を出すとみんなは同意するように頷いた。

謎の闘志が彼らから滲み出ていたに違いない。




「とりあえずクリスマスといえばケーキとか七面鳥なんかじゃないですか!」

厨房担当の長を任された虎丸はガリガリと近くに転がしていたメモに食材を描いてゆく、作る物は頭の中で決まっているらしい。


「ケーキはどこで買えばいい?」

「ケーキを買ってくるなんて言語道断!手作りケーキに決まってるじゃないですか!」

風丸がおそるおそる虎丸に聞くと炎が宿る目で指を指された、風丸はただ「すまん」とだけいい黙った。

「そんじゃあ買い出しは…そこのエイリア集団に任せる、質の悪いもん買ってきたら怒りの鉄槌!」

「一まとめにすんなよ!」

がたん、と椅子を倒しては南雲渾身の突っ込みは食堂に谺する。
ヒロトのでこに買い出しリストを押し付けては「一時間以内、時間厳守」と円堂はデザームこと砂木沼にそう言った。砂木沼も几帳面な性格であるため多分一時間以内には帰ってくるだろう。


「次はプレゼントだろ?吹雪の好みなんて知らねぇよ」

「一番知ってそうなお前が言うなよ」

染岡は背もたれに身体を預けながらうわごとに呟くと隣にいた土門が苦笑いする。

「ノリでいけるだろ、吹雪ってさなんでも気に入ってくれそうだしよ!」

「流石です綱海さん!」


結局プレゼントは染岡を筆頭する地方組とエドガーとテレスで出ていった。バランス的な意味とセンス的な意味合いに不安を感じて止めようとした時にはもう虎の屋周辺にはいなかった、あまりに不安を覚えたあまり風丸と飛鷹を派遣するのであった。







「これなんてどうかな?」

「うん、とっても似合うよ、でも僕はさっきの方が似合ってたと思う」

「吹雪さんってすごい的確にアドバイスくれますよね、すごいです」

試着した秋が吹雪に見せたピンクのワンピースをそう一言言うと嬉しそうに先程の服を持った。椅子に座って見ている吹雪の横では冬花が関心したように笑っていた。

「夏未さん、どれにします?」

「吹雪君に似合いそうな服……なんでも似合いそうなのよね、彼…」

「確かに……」

秋達から少し離れたところで夏未と春菜はハンガーの金属音も気にせずにただ彼に試着してもらわなくても似合いそうな服を探すのであった。







「買ってきました、教官!」

「うむ、ご苦労!」

砂木沼が敬礼しつつ、虎ノ屋に入って来たのは一時間ジャストであった。正確には一時間ジャストにその場にいたのは砂木沼だけでずっしりと重そうな荷物を持つ三人と涼しい顔でいる涼野はまだ虎ノ屋というゴールテープを切ってはいなかった。



ごとりと置かれた買い出ししてきた食材達はゆうに机を埋め尽くす程である。
虎丸は目配りで豪炎寺とフィディオと鬼道と土門に頷きかけると四人も応答するように頷き返し各々は持参した鞄から用意していたエプロンを取り出す。


そして各自、何も言葉を交わさないまま厨房に付く。

まず虎丸が持ち出したのは豪快にも七面鳥の原型の残る鶏肉を取り出すと周りの原型を残すように中の鶏肉を取り出す。

中から取り出した鶏肉は横で構える土門が塩胡椒とニンニクを擦り込んで下付けしてゆく、また一方では一口にちぎったレタスをボウルに入れる。

時に鶏肉を少しばかり炙り、サラダに盛り付けてゆく。

鶏肉をすべて取り出した虎丸はまた一方でトマトホールを鍋に勢い良く三缶ほど開封した物と小さく刻んだ玉ねぎを入れる。
やがてふつふつとトマトホールが熱を持ってきた所に一つまみ少量の塩をいれ、次にまた違う鍋に何かのだし汁に多くのスパイスを入れてゆく。

「何作ってんだ…?」

「カレーですよ、誰も好き嫌いなく食べれますし応用も出来ますからね」

カウンターから厨房を覗き込んだ佐久間が少しだけ控えめに虎丸に質問すると虎丸は佐久間の顔を一切見ずに作業を進める。

土門は見事なフライパン裁きでケチャップライスを作ると器用にも元は鶏肉の入っていた七面鳥の中にケチャップライスを詰めて中身が出ないように軽くタコ糸で縫い付け、オーブン用の大きな天板の上に置き少量の油をその七面鳥に塗り、七面鳥の周りにぶつ切りにした大量の玉ねぎと人参を乗せる。

「豪炎寺、そっちはもうできてるか?」

「待て、もう少しだ」

高速泡立て器で卵白を泡立ててゆく。やがて増えた卵白をゴムべらでゆっくりすくいまた違うボウルに入っている卵白や砂糖などに馴染むように混ぜてゆく。

やがて大きく平らなケーキの型に生地を流し込んでいき、天板に乗せてオーブンに持ってゆく。

「待たせたな、これを三十分頼む」

そう言ってオーブンの前でスタンバイする土門に手渡し、また自分の持ち場に戻って行った。

一方フィディオと言えばたっぷりの湯の中に大量のパスタ麺を投入したあとホールトマトを煮詰めてその中に炒めたひき肉と玉ねぎを入れてしばらく煮込む横で卵と生クリームを泡立て器でしゃかしゃか混ぜつつその中に粉チーズを入れる、フライパンにはオリーブオイルを引きベーコンを炒めている。
そのまた一方ではやはりマルゲリータピザの材料が並べられて、練った生地をラップに包んで寝かしていた。

「マークにディラン、後十分したら生地を広げておいてくれ」

「おう、任しておけ!」

「お、ミーの得意分野だねぇ」

フィディオは生地を二人に向かって投げそれを丁重にキャッチしたのであった。


「んー、鬼道君は何作ってんだよ」

「シチューだ、吹雪は以前シチューが好きと言っていたからな」

「く、詳しいねぇ……」


不動は呆気に取られながらも鬼道を見る。
生クリームに牛乳、下味に野菜を煮たのであろう良い匂いが立ち込めている。シチューは焦げがつきやすい故に鬼道は常にシチューに気を配りながらもじゃがいもを細く切りはじめた。

フライパンには大量の油を用意し、ざるに乗せたままのじゃがいもを油を中に通すと予想通り派手な音を立てていた。


「なんだこいつら……シェフか?」

「うまそうっす」

ただ立ち尽くす土方と壁山はてきぱき準備をする五人を見た。目にも止まらぬ動きはレストランの厨房にも勝りそうな程である。

「こっち余裕がある、もう一品甘いの作ろうか?」

「お願いします、ケーキとは違う系統ので!」

豪炎寺は虎丸から指示を受けて少しだけ悩んだような素振りをした後、残りの食材から卵と砂糖と牛乳を混ぜて火に掛ける、そのあとに次は砂糖と少量の水だけで煮詰めていき少しだけ焦げて来たら鍋を火から外して小さく容器に一つずつ流し込んでゆく、その後続けて最初に火に掛けたものを注ぎ冷蔵庫に掛ける。


「なんだか……スピード料理番組見てる気分だよ」

ただ椅子に座って大人しくしている基山はそうボソッと呟いた。するとガラガラと虎ノ屋の扉が開くとやたらデカイ荷物を持たされたテレスと染岡が登場する。

「遅かったなぁ、みんな」

「少し道が混んでいたのと…一番は何を買うかで悩んで…」

円堂の出迎えに答えたのは立向居だった、彼は申し訳なさそうな顔で染岡達を見ていた。

「ま、ちゃんと吹雪の欲しがりそうなものは買えたぜ」

「気に入って貰えるかが問題だけどね、ウッシッシ」

風丸が近くにあった椅子に腰掛け一息つくよこで木暮はそういって逃げる。もしこの場に春菜が居合わせていたならば木暮はいつも通り春奈に追い掛け回されていたかもしれない。


「できた!」


ほぼ声は同時に厨房から聞こえて来た。おびただしい料理が次々に虎ノ屋の大きなテーブルを埋めてゆく、豪炎寺に関してはやたら完成度の高い巨大ブッシュ・ド・ノエルをおいてゆく。

「私からも無数の紅茶の葉を用意しましたのでよろしければ」

「気が利くじゃないか」

エドガーが自分のバックの中から缶に入っている紅茶セットを差し出すと鬼道はただただそう返した。


「よし、秋達に吹雪に戻るように連絡するぞ」

円堂が握り締めた携帯を見てみんなが頷いた時、円堂は秋に電話を掛けていた。




 
 
 
 
 
「もう戻りましょうか」

「そうだね、大分日も沈んできたみたいだし……」


秋の一言で吹雪は立ち上がって帰る用意をし始める。どれだけ長居したかはわからないがとりあえずけのびをした。

「夏未さん、買い物は?」

「済んだわ、さぁ帰りましょうか」


冬花が夏未に吹雪には見えないように確認を取ると夏未は購入した証拠にもなる紙袋を冬花にみせるとほっと一息ついた。








外はもう真っ暗で昼間よりも冷え込んでいて吹雪は寒さをしのごうとマフラーに顔を埋めた。

虎ノ屋の前は明るく外にまで光が漏れだしていた。中はせわしない笑い声や叫び声なんかが聞こえてきた。

「吹雪さんが開けてくださいよ!」

「僕?」

春菜からの突然のご指名に吹雪は一回自分に言ったのかと問い掛けるとマネージャー達は揃っていい笑顔で頷いた。

吹雪はゆっくり引き戸に手を掛けて思い切り扉を開けた時だった。
パァン!と弾ける音にビクッとした後みんなを見るとみんな揃いに揃っての

「メリークリスマス!吹雪!」


と言う。ある種のドッキリに吹雪はただポカンと立ち尽くしていた。みんなの中から円堂が出てきては吹雪の肩をぽん、と軽く叩いた。

「すごいだろ、みんな吹雪のために用意したんだ」

「僕の?」

「ああ、お前の家って色々あったろ?だから悲しいこと全部忘れちまうくらい思い出に残るような楽しいクリスマスにしてやろうって、計画してたんだ」

「みんな……」

すると感動が込み上げて来たらしく吹雪は鼻をすすって泣き出した、円堂達にはどうして泣き出したのかなんとなくわかったがあえて泣くなよ、と声をかける。


「そうだ、泣くな吹雪」

「響かんとくぅ!?」

頭上から声がして振り向けば違和感なくサンタクロースの格好をする響が白い袋を担いで現れた。

さすがに円堂もこれにはすっとんきょうな声を上げてただ響を見ていた。響は泣きじゃくる吹雪の頭を撫でた後に白い袋からプレゼントを取出し吹雪に手渡した。

その姿は正にはまり役であった。

「サンタさぁあああん」

吹雪は嬉しさのあまりか響に泣きながら抱きついた、吹雪の頭の中がネバーランドということは前々から知っていたがまだサンタを信じていたのか、とそんな無垢な所にも釘付けになっていた。


「ほら、士郎!みんなで用意したんだ、食べてみてよ」

フィディオが吹雪を自分の横席に招き吹雪もそれに従いフィディオ脇に座った。
盛り付けられた料理の中から七面鳥のローストチキンにかじりついた。

「おいしい、これすごいおいしい!」

「そりゃ、俺が吹雪さんのために頑張ったんですからね!」

虎丸は嬉しそうに微笑む横で冬花が立ち上がって先程の紙袋を吹雪に渡す、ただ着てみてとだけ言った。

「これを……?」

「うん、吹雪君なら似合うわ!」

中に入っていたのは黒を基調としたゴスロリワンピースにニーソックスのセットだ。
マネージャー達に流されるままに奥の部屋で着替えてくると案の定すごい破壊力に獣達は吠えた。

純白の肌に黒をゴスロリは吹雪の白い肌を一際輝かせる。
恥ずかしがる吹雪の横にヒロトが荒い息遣いで近付けば全部体制で止められた。

そして染岡たちはプレゼントを渡して、吹雪が中を開けるとマフラーを巻いた大きなくまのぬいぐるみがある。しかもくまの着ているTシャツには一人一人何か書いてある。



「ありがとう、みんな大好き!」

吹雪が感謝を笑顔と一緒に伝えたのであった。


その日は忘れられない最高のクリスマスパーティーになった。










笑顔が素敵なサンタクロース


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絞り切れなかったので総受けになった、多分サイト史上最高の人数が出てきたとおもう

言わせたかった言葉集

「さぁ地獄のパーティーを始めよう」
BY涼野
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