※『愛迷エレジー』パロ
「なんか泣きすぎたみたい……」
フィディオはさっきまで腫らした目を必死に擦って涙を無かったかのように拭おうと笑いながら誤魔化そうとする。
あまりにも滑稽だ。
フィディオをこうさせたのは僕自身だというのに………僕は目の前に立つフィディオを笑ったりはしない、いや笑えないのかもしれない。
そうだ、あれはフィディオの浮気だった。
もしかしたら僕がそう思っているだけの勘違いなのかもしれない、フィディオが女の子を連れて笑いながら歩く後ろ姿を僕は許せなかった、それほどフィディオを愛していたからこその醜い感情。
多分、僕がついカッとなって言ったとある言葉のせいでこうなっている。
気のせいかな、考え過ぎかな?
脳みそも疲れたみたいだ……。
あれからもう3日経つ、彼はもう反省しただろう…そろそろ助けようか、もしかしたらこんな醜い感情を持っていた僕に呆れ果てているかもしれない。
もう僕のことなど忘れて違う子と遊んでいるんじゃないかな?
そんな恐怖も引きつれて、僕はイタリアエリアにある宿舎の前で立ち止まった。
いつもならば軽く引ける扉が今日はドアノブは冷たく重い、勇気を雑巾みたいに絞ったはずなのにどうも重い。
凄く怖い、プレッシャーからか手から汗が出て、ガタがアシアシする、あ…間違った足がガタガタする。
自分から言いだしたはずなのに………それなのに君に溺れるのが怖くて。
人間はエラで呼吸なんて出来ないから溺れたら誰かに助けてもらうか、自力で何とかしないと浮き上がらない。
フィディオ君がいて、愛しすぎて怖くなって…どんどん揺さ振られて酔わされて……足掻いてた。
そう考えていたら怖くなって僕はイタリア宿舎の前から駆け足で逃げ出していた。
ごめんなさい、心の中で何度もそう囁いた。
僕はこれでいいと思う、今度彼に会えたならそう彼に言おう。
「あれ、吹雪」
「マルコ君にジャンルカ君……」
呆然とする僕の前には随分大きな荷物を抱えたマルコ君とジャンルカ君がいた。
二人は僕の顔を見つめて来て「何かあっただろ?」とまるで慰められるような柔らかい声音で問われた。
ない、と言ったら嘘になる。
僕はなんとも答えずにただ口を閉じていると、二人は話を変えた。
「いやさ、フィディオがここ何日か前からおかしいんだよ」
「3日前からだな」
「……え?」
3日前と言えば僕とフィディオ君が最後にあった日だ。
マルコ君とジャンルカ君は奇妙そうに顔をしかめながら「元気がない」とか「大好きなパスタもろくに食べない」とか言う。
一歩、また一歩、イタリアの宿舎から遠退く度にフィディオと微笑み合う僕の姿があって、やっぱりその時に戻りたいと思った。
「マルコ君!ジャンルカ君!」
「ん?」
「ありがとう!」
バッ、と勢いよく頭を下げた僕は再びイタリアの宿舎に足を動かした。
二人はどうして礼を言われたのかわかっていないっぽいけどどうでもいい。
やっぱりフィディオ君と一緒がいい、もう恐がったり逃げたりしないよ、ただ純粋に君に会いたい……、こんなこと言うのも馬鹿らしいけど僕がフィディオ君に元気をあげたい。
「アンジェロちゃん!」
「アンジェロちゃんじゃない、君付け!」
「フィディオ君は?」
「フィディオなら多分部屋じゃないかな?ここ最近部屋に籠もりっきりで……」
僕はアンジェロちゃん…じゃなくアンジェロ君の話を最後まで聞かずに「ありがとう!」と言い、僕はドスドスと騒がしい音を立ててフィディオ君の部屋のドアを開けた。
「フィディオ君!」
「しろう…」
ぼんやりとした目で僕を見ていた、フィディオ君がなんとなく怖いと思ったけど気にしない。
腫らした目は3日前と変わらない………もし涙が止まらないなら僕がその涙を飲み干してあげたい。
甘党の僕からすれば塩辛いのはちょっと辛いけどフィディオ君のためなら大したことないよ。
その代わりと言ったら何だけどまた僕に甘い愛をくれないかな?
「フィディオ君……ごめんね…」
僕はフィディオをきつく抱き締めてキスをした。
ただ僕のことを愛して欲しいんだ…………
「士郎……」
フィディオ君が抱き締めてくれた温もりはとても心地よかった。
愛迷エレジー
…………………………………
原曲が残ってない……
ああ、でも楽しかった