エドガーの女性を口説く癖は日常茶飯事のことだ、とエドガーの恋人である吹雪は悟る。
だがやはり自分以外の人ばかりを見ている気がしていくら愛の言葉を囁かれようとも本当に愛されている実感が湧かない。
「…………って訳なんだけど…」
吹雪は肩を落としながら相談相手である冬花に言うと、冬花はただニッコリと笑っていた。
この場には二人しか居らず下手したらデートしているようにも見えるかもしれないがチームメイトも吹雪達自身も姉と弟のような関係としか見ていない。
「で、ふぶっぺはどうしたいの?」
「ふぶ……」
「ふふっ、気にしないで私がそう呼びたいだけ」
冬花はいつも通りの透き通る声で吹雪に問いかけた。吹雪は少しだけ悩み小さくうねるような声を出した。
どうしたいか、と言われれば特にすることもなくただ愚痴に近い相談を聞いて欲しかっただけだ。
だが冬花に言われてなんとなく嫉妬させたくなり耳を傾けてみた。
「ふぶっぺがエドガーさんじゃなくて違う人にべったりしてみたらどうかな?」
「………べったり?」
「うん、そしたらね流石のエドガーさんも嫉妬すると思うの!」
ぱぁあっ、と言う効果音が似合いそうなキラキラした笑顔で微笑む冬花に吹雪は少しだけ女性に対する恐怖を抱く。
だがよくよく吹雪も考えてみれば楽しそうに思い頷いてみた。
イギリスエリアに行ってやろうと思い取り敢えず近くにいたヒロトに声をかけてみた。
「ねぇヒロト君、練習終わった後にちょっと付き合ってもらっていいかな?」
「付き合う!?うん、いいよ、むしろ大歓迎さ!!」
「お前の思い通りにさせるか!」
吹雪の何気なく誘った言葉に誇張するように基山嬉しそうにするもつかの間だった、間髪を入れずに話に入って来たのは仁王立ちして待ち構える風丸だった。
「吹雪、どこに行きたいんだ?」
「え…っと……」
「吹雪君が困ってるでしょ、風丸君はあっち行ってて!」
基山はそんな言葉をいいつつ、風丸を突き放そうとする横から鬼道が顔を出しては「何を騒いでいる」とだけ言う、またもヒロトは小さく舌打ちをした。
「吹雪さんっ!俺が付き合いますよ!」
虎丸は地獄耳らしい。
遥か遠くから手をブンブン振りつつそんなことを言うとその後豪炎寺は「吹雪、俺が付き合うぞ」とか言っていたりした。
「ふぶきー、サッカーやろうぜ!」
とか円堂の声が聞こえる頃にはすでに誰と付き合うかなどの話ではなく誰が吹雪の隣に居るべきかと話の内容がほぼ脱線していた。
そんな中木野達が吹雪に申し訳なさそうに話をかけた。
「吹雪君、さっき電話でエドガーさんから話があるからイギリスエリアに来てって連絡があったんだけど………」
そう聞かされて吹雪はすぐにイギリスエリアへ走っていった。チームメイト達が口論するなか話の中心人物である吹雪はふらりと走っていなくなった。
吹雪は内心焦った。
まさかでもないがいまになって別れ話を切り出せるのかと思ったからだった、自分より最愛の人が出来たんじゃないかと心配になりながら重たい足を動かした。
イギリスエリアに着けば橋の上にエドガーが居た。
いつも通りの笑顔で出迎えられて肩で息している自分が恥ずかしくなって来た。
「用って……なぁに?」
「これを、吹雪にと……」
手慣れたように滑らかな動きで差し出したのは小さな箱だ、開けてみれば中には決して安物とは思えない指輪が収められている。
「………指輪…?」
「女性に聞いたらこれが一番喜ばれるというので……不満でしたか?」
「………ううん!違う……僕てっきり別れ話とかかなって……」
吹雪の顔が訝しげに見えたのかエドガーがそんなことを言う。
「誰が貴方みたいな素敵な恋人を突き放すんですか?」
エドガーはゆっくりと吹雪を自分の腕の中に収めて優しく髪を撫でる。
つい不安だったことを口走った。
「心配したの、僕より好きな人が出来たんじゃないかって心配した…」
「私の方が心配ですよ」
「へ?」
意外すぎた返答に吹雪はバッと顔を上げた。
「貴方の周りにはハイエナしか居ませんから……私が見ていない時が不安ですよ」
エドガーはそういってギュッとより一層吹雪を抱きしめる力が強くなった。
こんなに思ってくれているひとがいるのになぜ気付かなかったのか不思議でならない。
「エドガーくん……」
そっとそう囁いて指輪を左手の薬指にはめて見せればエドガーは微笑み吹雪の唇にそっとキスをした。
運命だと信じてる
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はわわ、遅くなってすみませんでした、リクエストありがとうございます!
エドガーさんは余裕そうに見えて実は内面焦ってたりするといいです、あえて親善パーティーな話にしませんでした!
それではサイト共々これからもよろしくお願いします!