フィディオは思えば大きな誤算に気付いてはいなかった。それは絶対にない、と自分自身勝手に断定していたからである。
正に灯台下暗し…………
あまりに予想していなかったことに驚いた、いや予想は容易に出来ることだったが無いと思っていた。
好きな子が目の前で可愛い服着ていれば勿論反応するのがイタリア出身の血なのかもしれない。
「士郎………それ…」
「へん…?」
「いやいやいや!そうじゃなくって、うん、可愛すぎて……」
吹雪はフィディオの目の前にいた。
マネージャー達が吹雪に見合った服をと選んでくれた服はベタにもどこから見ても女の子が好き好んで着るようなフリルが敷き詰められたロリータ服だった。
吹雪は女の子のお願いは断われない主義で半ば強制的に着せられた上、着替えを没収されたらしい。
フィディオも吹雪のロリータ姿を想像したことは幾度もある。だが空想の中ではなく現実にいる吹雪が身に付ける漆黒のロリータ服と絶対領域は眩しい、まさにシャイニングパワー。
変じゃない、むしろにあってる、是非ともテイクアウト!…………なんて言えない。
だが………
「吹雪、すんごく似合うな!」
「ああ、思わず持ち帰りたくなるな…」
可愛らしい格好をした吹雪の脇にはマルコとジャンルカがいつのまにやら登場し、フィディオの心をまるで代読するようにそう言った。
もちろんフィディオのかけた言葉ではなく、二人が発した言葉だ。吹雪が照れながら赤くなるのもマルコとジャンルカへであってフィディオに向けた物ではない。
「なんだよ、二人共……」
フィディオは望まなかった二人の登場に思わず嫌悪感に満ちた声を出して二人を見る。マルコとジャンルカからして見てみればフィディオはただのだだっ子にしか見えない。
「吹雪がかわいいって本当のこと言っただけで何で怒られなきゃいけないんだ?」
「裏切ったな!マルコにジャンルカ!」
「いやいや、最初から誰もお前の味方だなんて言ってない」
吹雪の前に立ちはだかる仲間兼友人をこんなに憎いと思ったことはまず無いだろう。
二人からして見ればフィディオもフィディオでヘタレ過ぎると思うしかない、いつも調子乗って見ず知らずの女の子達の投げキッスするくせに……と腹の中でそう思うしかない。
「吹雪、あっちの店知ってるか?可愛い小物とか売ってるんだぜ」
ジャンルカがさりげなく吹雪の腰を触りつつフィディオの居る位置の逆側を向かせた。
少しだけふてくされるフィディオを確認しながら吹雪は二人に流されるままどこかへフラりと消えてしまった。
「ちきしょう………あの野郎共……後でカテナチオの刑に処してやる……」
イタリアエリアはヴェネツィアを模した作りになっている。夜の運河の流れる様子をただ一人悲しく見ているしかない。
周りを見渡して見ればカップルだらけで更にフィディオを落ち込ませる。
「…………フィディオ君」
「しろう……二人はどうしたの?」
フィディオはまるで幻覚を見ているような気分で吹雪を見た。
やはり女の子の服に身に纏う吹雪は可愛い以外言葉が出ない。
「ふふっ……二人は帰ったよ、フィディオ君迎えに来たの」
ぴょこぴょこ跳ねる吹雪に思わず見惚れていた。吹雪が心配するようにフィディオを覗き込めばあまりの顔の近さにフィディオは赤くなる。
「わざわざ迎えに来てくれてありがとう……でも今はここに居たいんだ…」
フィディオは少し拗ねていたいだけである。
ただ流れる運河を見るフィディオの横に吹雪はなんのためらいもなく座る。
「フィディオ君がいるなら僕も一緒に居たいな…」
「……士郎……?」
「………もしかして僕、似合ってない……?」
流れる運河から一瞬にしてフィディオは吹雪の方を向けば不安気な顔でそこに座っていた。
「そんなことないよ!似合ってるよ、士郎!」
「さっきから顔合わせくれないから……」
「士郎がこんな可愛かったらさ……隣にいるだけで…すごくドキドキするんだ」
吹雪はフィディオの肩にもたれかかって来ればフィディオは吹雪を受け入れた。
「士郎、俺さ……士郎のことで頭がいっぱいでさ…士郎が違う奴と話すだけでイライラして……でも、これだけは言えるよ…やっぱり士郎のことしか愛せない」
「…………」
「………士郎……?」
フィディオの熱演が終わった後、吹雪からの返事は無く不安になって顔を覗けば無防備な寝顔をフィディオに見せたまま寝ていた。
結局寝ている吹雪を背負って帰ることになった、だがフィディオは吹雪と一緒にいることに幸せを感じていた。
マルコとジャンルカは後日、カテナチオの刑に処されたらしくボロ雑巾のような無惨な姿で発見された。
君と居られる幸せ
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リクエストありがとうございました!
マルコとジャンルカが報われない最終的にフィ吹になってしまいました………
こんな感じでよろしかったでしょうか?
それではこれからもサイト共々よろしくお願いします