※アツヤ生存
学校内では基山と南雲と涼野は常にいる事が多く、しかも生徒会を務めていた。仲がいいかと言われればきっと悪い方では無いはずだ、だが喧嘩が絶えない三人であった。
そんな三人を敬意と悪意を込めてアツヤはこう名付けた。
「お、三馬鹿」
これである。ちなみに勉強が出来ない馬鹿は南雲だけで基山と涼野はそれなりに出来る方だが付けられた忌々しいレッテルのお陰で馬鹿と言うイメージが定着していた。
「言っておくが私はこの前のテストは90点だった」
「そうだよ、晴矢だけなのに……なにを隠そう赤点だよ」
思わぬカミングアウトに南雲は基山の頭に一発チョップを食らわした。それを聞いていたアツヤは自慢気に「俺は兄ちゃんのお陰で赤点は逃れたぜ」とそれは上機嫌だった。
「晴矢のあの解答は奇跡だったよね、配点の先生絶対に爆笑してただろうな」
「どんなんだよ………」
基山はいきなり笑いだした。思い出し笑いは変態の証だぞ、と涼野がいうもあながち間違いではない。
「ってかなんの用だよ」
蒼白の空に映える真っ白い入道雲が見える屋上は賑わいに溢れている。主にサッカー部員で。
「とりあえず君のお兄さん貸して」
「断る、鬼道とか豪炎寺とか風丸に頼めよ」
アツヤはある意味では硬派であった。他に頭の良い人の名を上げれば、鬼道は厳しそう、豪炎寺には借りを作ったらいけない気がする、風丸は個人的に怖いと個人個人に感想を述べた。
「わがまま言うなよ」
「わがままじゃない、マンツーマンで教わる上で俺が考えた結果だ」
南雲は自信満々にそう言って、涼野の肩に手を馴れ馴れしく置けばそれはもう光の速さで退かされるのであった。
「おい、お前達の友人の思考回路からなんとかしたほうが良くね?」
「言うな、もう手遅れなんだ…」
「ちなみに豪炎寺君に無言で首を横に振られたほどだよ!」
「重体じゃねーか」
涼野は演技かかったような悔しげな顔を見せると基山はあははは、と笑いながらそんなことを言う。
「アツヤも人のこと言えないでしょ?」
「兄ちゃ……兄貴!」
アツヤが座っていた場所にそんなことを言いつつ、吹雪アツヤの兄にして保護者の吹雪士郎はため息混じりにそういった。
「今回は何とか免れたけど、またあるんだよ?」
「知ってるよ!」
アツヤはさっきまでの威勢はどこかへ飛んで行ってしまったらしい、完全に態度は変わっていた。
「吹雪君、晴矢に勉強教えて上げられないかい?」
「え?僕が……?」
「このままでは馬と鹿に失礼なレベルのバカになる」
おい、てめ、と涼野に殴りかかろうとする南雲を基山が止めた。吹雪兄弟はただそれを見ていた。
「いいよ、アツヤと一緒にね」
次のテストで南雲は点数自体は赤点を免れたが名前を書き忘れてやはり赤点。
南雲達についた三馬鹿というあだ名はいつしか校内を巡っていた。
馬鹿で何が悪い
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アツヤはツッコミ慣れしてるに違いない