ライオスコット島のエントランスから見える月は綺麗だ、と夏未は言っていた。マネージャー達はその情景を見たらしくロマンチックだった、と言っていた。

宿舎内で吹雪はふとそんな会話に耳を傾けた。

「吹雪君もそう思うでしょ?」

「あ、うん、すごく素敵だと思うよ」

するとやっと同意する人の答えを聞けたのかマネージャー達は盛り上がっていた。




夜の海は青かった。そこに映える白い月は幻想的で確かにマネージャー達がロマンチックだと言っていた理由もなんとなく分かった。
一人で来たわけではない。右手には恋人であるフィディオ・アルデナがいる。

彼は吹雪がエントランスの海を見たいと言ったらわざわざすっ飛んで来た。そして現在に至る。

「ごめんね、夜遅くに」

「士郎を一人にしておける訳ないでしょ?」

そんなフィディオの一言でも吹雪の頬は熱を持ち赤くなる。そんな吹雪を見てフィディオは嬉しそうに微笑む。

「なんでだろうな、士郎と見る空は広く感じるよ」

「そう?」

海岸の砂浜に腰を下ろしながらフィディオはそんなことを呟いた。吹雪は少し嬉しくなり、フィディオに寄り添い相槌を打つ。

夜遅いせいもあり、海岸にはフィディオと吹雪しか姿はなく夜の静寂がそこにはある。ただ聞こえる波の音はより一層ロマンチックな雰囲気を醸し出すものであった。
「士郎に会えて良かった」

「なに?急に……」

二人の会話は甘ったるかった。フィディオが甘える様に吹雪に抱きつけば吹雪もそれを受け入れる様にフィディオの背中に手を回した。

「士郎無しじゃ生きられない」

「大げさだよ……でもね」

「ん?」

「僕もフィディオがいないとだめかも……」

吹雪はそう言ってフィディオを頬を真っ赤にしながら見つめた。フィディオもフィディオで吹雪からの返答があまりに嬉しく吹雪を苦しくなるくらい抱きしめた。

「ずっと一緒にいてね?」

それは風が囁くように小さな声だった。きっとこの声はフィディオの耳にしか届いていない。

「もちろんだよ、お姫様」

フィディオは吹雪の手の甲に軽くキスを落とした後、月明かりに照らされて艶やかに見える吹雪の唇をなぞる。吹雪も恍惚な表情でフィディオをただ見つめる。

フィディオは吹雪の顎に手をのせて優しく口付けをした。慣れている舌遣いに吹雪は驚く。吹雪は息継ぎが良くできないせいか息苦しそうにフィディオの胸板を叩くとフィディオは名残惜しそうに吹雪の唇から離れる。

「ごめんごめん、つい吹雪が可愛い反応するから」

「ずるいよ、フィディオ……」

「もう一度しよ?」

吹雪は一息つき、仕方ないな、と言ってフィディオを見つめる。






「……………見るんじゃなかった………」

「どうしてああいうこと公衆面で堂々とするかなぁ……」

やたら慌ただしく宿舎を飛び出して言ったフィディオを心配して追ったジャンルカとマルコは深いため息をつく。

月明かりに照らされてフィディオと吹雪がいるのをすぐに発見するもとても入り込める空気ではない。むしろ入り込んだら後が祭りである。

「どうする?あのバカップル……」

「………声かけたらフィディオの奴絶対怒るからなぁ」

マルコはとりあえず再びため息だけして二人に話掛けられる雰囲気になるまで待つことにした。


月に照らされ口付けを交わす二人には到底話掛けられないだろう、とジャンルカは頭を抱えるしかなかった。


流星が恋した天使

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リクエストありがとうございました!

甘々と言うシチュエーションだったのでひたすら甘くしてみましたが………果たしてどうなんでしょうか……?

少しでも二人の醸し出す甘ったるい空気が伝われば幸いです

それではありがとうございました。
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