あの頃と変わらない、と緑川はドラマ撮影現場から戻って来た吹雪に言った言葉である。
吹雪は決まって仕事に行き、仕事から帰って来ても社長室に寄っては鬼道と話しをする。

だからこの日も吹雪は鬼道のいる社長室に寄る、するとそこには普段見慣れない面々に吹雪とマネージャー染岡は驚きを隠せない。

「やぁ、久しぶりだね吹雪君」

基山は音無に淹れてもらった紅茶を啜りつつも吹雪に挨拶する。きちんと着こなされたスーツは立派な社会人だということを意味している。

「染岡君も久しぶり、益々ヤクザみたいな顔になっちゃったねぇ」
「おい基山、ケンカ売ってんのか?」

基山がけらけら能天気に笑えば、お堅い染岡は沸点がものすごく低いせいもあり、いつもの渋い顔をより一層渋くすれば、吹雪から制止の声を掛けられる。

「それで?ヒロト君に緑川君はなんか用でもあるの?」

と拍子抜けた吹雪の発言にヒロトと緑川は笑いを堪える一方、染岡にそうだからいるんだろ、と言われた。

「実はうちのブランドと鬼道君の所のタレントでコラボすることになって、君が選ばれたんだ」

「ヒロト君の所のブランドいいよね、染岡君にあげたネクタイそうだよ」

すると染岡はさりげなくネクタイのロゴをみれば確かに吉良と筆記体で書かれたものを見つけた。

「なら話は早い、引き受けてくれるよね?」

「うん、いいよ」

鬼道は吹雪のその一言を聞き安堵し、企画書をさらさらと書き始める。

その間基山達と過去の思い出話をするも、誰一人"円堂"という名前を出さなかった。









「よくって?私が日本に戻る間、絶対に彼を守りぬくのよ」

「やっぱりナツミにはかなわないよ、わかったよ」

すると彼女はパスポートを持ち直し、スーツを着こなした彼に背を向けて立ち去っていく周りの人混みに紛れてすぐに消え去ってしまった。

「ナツミ………」

「ほら、帰ろう……ナツミに頼まれてることをしないといけないだろ?」

「…………そうだね」

幼なじみに連れられた彼もまた空港の人混みに消えていった。







今自分に出来ること

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ヒロトもなんだかんだでしっかり者
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