手が離れない血鬼術 2



「なんで!? どうして!? 炭治郎ばっかり鈴ちゃんと手繋いでずるいぃいいっ!」
「ず、ずるいって仕方がないだろ!?」
「鈴ちゃんの白くて柔らかいお手々を握っていいのは俺だけなんだぞ!?」
「許可してないからね!? わたしはっ!」

左から善逸くん、炭治郎、わたしの順で手が繋がった状態で、善逸くんは叫び続ける。
ああ、近距離だからやめてほしいのに……。
それも勝手に手をつないでいいのは自分だけってことになってるよ。

「とにかく、鬼が近くにいるんだから刀を持って……――」
「俺も鈴ちゃんと手をつなぐッ!!」

ぱしっ

「「あ」」

わたしの手が善逸くんに掴まれたときには、すでに時遅し。
しっかりと血鬼術にかかったままのわたし達は、仲良く輪になってしまった。

「でへへ、鈴ちゃんの手柔らかい……」
「何をするんだ、善逸! さっきまでの状態ならまだなんとかなったのに!」
「うるさい! そもそも炭治郎ばかり良い思いなんてさせねぇからな! 女の子の手! 可愛くて柔らかくて小さい女の子の手! それも鈴ちゃんの!! ああ、幸せ!」
「どうしよ、炭治郎。わたし今、ものすごく善逸くんを殴りたい」

デレデレと鼻の下を伸ばす善逸くんを冷ややかに見てしまっても仕方なくない?
炭治郎も流石に鬼を目の前にして、目を吊り上げて善逸くんを叱りつける。

「幸せな処大変申し訳ないが、このままだと鬼に喰われるぞ!」
「あ、出来ればミディアムレアで食べたく思います…」

ちょっと、鬼が調理法を考え始めてるんですけど……?
あ、やばい。この鬼、マジで斬りたい。

「俺の鈴ちゃんに先に手を出したのは炭治郎だろ! そもそもその場所自体が俺の役目だったのに! 本当にいつも美味しいところばっかり持っていきやがてとんでもない炭治郎だぜ!」
「女の子が転ぶところを放っておけない!」
「その気持ちは分かりますけどね! 鈴ちゃん怪我してないみたいだしそれはありがとう!」

罵り合ってるのかそれとも褒め合ってるのか、炭治郎と善逸くんの攻防が続く。

鬼が嬉しそうに鍋の準備を始めている中で、まだまだ続きそうな言い合いを冷めた目で見つめていると、ついにゴシャアという音が聞こえた。
慌てて振り返ると、炭治郎が善逸くんに頭突きをくらわせているではないですか。

え、何があったの……?

「よし、善逸は黙らせた」
「いやいや、この状態で善逸くん黙らせちゃ駄目でしょ!? 誰が運ぶの!?」
「善逸なら引きずっても大丈夫、鍛えているからな!」
「そういう問題じゃないよね!? 炭治郎、天然に拍車かかってきてない!? それ以前に刀どうするの!?」

爽やかな笑顔ではっきりと炭治郎が言うのに、わたしはツッコミまくる。
善逸くんが失神したことで繋がった手が滅茶苦茶重い。

すると、鬼が嬉しそうに包丁を取り出してにたりと笑ったのが視界に入った。


あ、ヤバイ。喰われる。



続く


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