手が離れない血鬼術 5


「は、離れてる! 外れてるよぉおおっ!!」
「良かった! これで日輪刀を持てる!」

善逸くんと炭治郎の手が漸く離れた。

すると鬼がわたし達を追いかけてきたのか、ずさぁあっと茂みに落ちてくる音が聞こえる。
わたし達は慌てて立ち上がると、炭治郎が日輪刀を抜いた。
それを、わたしと善逸くんは、まさか、という目で見てしまった。

「え、ちょっ……炭治郎……」
「まさか、お前このまま戦うつもりなんじゃ……っ!」

わたしはまだ炭治郎と善逸くんと繋がったまま。
善逸くんに至っては左手がわたしの右手と繋がったままだ。

善逸くんが炭治郎の胸ぐらを掴んでガクガクと揺さぶり始め、泣きながら噛みついた。

「たんじろぉおおっ! お前、それ、利き腕じゃないだろぉおっ!?」
「それでもこのままやられるわけにはいかない! 大丈夫だ。厳しい鍛錬を乗り越えてきた俺たちなら利き腕じゃなくても刀は持てる!」
「そういう問題じゃない! そもそもお前が動いたら鈴ちゃんも巻き込まれるの! んでもって俺も間違いなく巻き込まれるの! お前の呼吸についていけるわけがないだろうが! わかれよっ! 俺は死にたくないからな!」
「でもな、善逸……。鬼を倒さないと、どうせ死ぬぞ?」
「そんな端的に言うんじゃないよ! 説得力ありすぎて涙が出てきたわ!」

まぁ、そうだよね。
鬼を倒さなきゃ、わたしたちこのまま鬼の餌だよね。

乾いた笑いを浮かべながら、わたしは仕方が無いと息を吐いた。

「……、善逸くん」
「何!? 鈴ちゃん!!」
「ちょっと寝ててね」

炭治郎と繋がった方の手でずびしと善逸くんの頸に手刀を落とした。
入り方が甘いかと思ったけど、どうやら無事に気絶してくれたようだ。

「鈴……」
「そんな顔しないでよっ! 炭治郎だってさっき同じようなことしたじゃないの!」

人を人と思わない瞳でわたしを見てくる炭治郎に、わたしは思わず言い返す。

頭突きで眠らせた炭治郎にだけは断じて言われたくない!

そしてわたし達は改めて鬼に向き直る。
すると、同時に気絶していた善逸くんがゆっくりと立ち上がった。

「とにかく、さっさと終わらせればいいだな。鈴ちゃん、足に負担かかるかもしれないけど……」

瞳を閉じたままの善逸くんが、いつもよりも低めの声で話しかけてくる。
彼の中にいるもう一人の彼を呼び覚まして、わたしは頷いた。

「大丈夫、頑張ってついていく」
「分かった。炭治郎も、いけるな?」
「もちろんだ! さぁ、行こう!」

包丁を手にニタニタ笑う鬼目がけて、わたし達は強く地面を蹴った。




まだ続くね

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