手が離れない血鬼術 4
どれくらい気を失っていたのだろうか。
崖から落ちて目を覚まして空を見上げる。
空と自分の間には緑が挟まり、「ああ、木々が緩衝材になったのか」とぼんやりと思った。
「いっ、たたたた……」
ゆっくりと身体を起こしてみてふと思う。
崖から落ちたはずが、痛みはそこまで強くはない。
あちこち痛むのは、木々で擦れた小さな傷の所為。
そして、自分の下にある二つの温かい柔らかな物。
「………っ!? 炭治郎!? 善逸くんっ!?」
二人を敷いていたことに気付いて、わたしは慌ててその上から降りようとした。
けども、繋がっているその手に再び同じ場所へと身体は引き戻される。
まだ二人とも意識は戻っていないのか、瞳は閉じたままだ。
身体は隊服のおかげで大きな外傷はなさそうだが、剥き出しの顔には擦り傷が出来ている。
二人が同時にわたしを助けようとして、下敷きになってくれたのだと思うと申し訳なさで涙が出そう。
二人と繋がった手をぎゅっと握り返して、それを額に当て小さく礼を呟いた。
「……、鈴……?」
「鈴、ちゃん……?」
同時に気が付いたのか、二人がぼんやりと目を開くのに、わたしは思わず身を乗り出す。
「良かった、二人とも気が付いたんだね!」
「ああ、いっつつつ……。鈴は怪我はないか…?」
「そうだよ! 鈴ちゃん身体痛くない!? 大丈夫!? どこもおかしなところない!?」
ホッと安堵していると炭治郎は身体を起こしながらわたしを気にしてくれた。
それに善逸くんも……。
いつもならまず自分の身体が痛いと叫び始めそうなところだが、反対にペタペタとわたしの身体をペタペタ触りながら怪我の状態を確認し始めた。
「二人のおかげで怪我はないよ。ありがと…。善逸くんもそんなに触らなくてもだいじょ………、ん?」
善逸くんがあまりに触るのでわたしは注意するつもりで口を開いた。
けど、……あれ?
なんで、善逸くん、片手空いてるの?
輪になってどうしようもなかったわたし達に、漸く兆しが見え始めた。
まだ続くよ