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You side

子供の頃から勉強が好きだった。負けず嫌いでなんでも1番じゃないと気が済まなかった。
恋愛なんて興味がなくて、中高、女子校に通っていた。
そんな私は東大に入りたてのころにアイドルというものに興味を持ってしまった。
たまたま友人の付き合いで行ったアイドルのLIVEに行ったことがきっかけだった。
キラキラな衣装を纏った可愛い女の子達。みんなを笑顔をにさせるパフォーマンス。
私もこんな風になりたいと思い、早速色んなオーディションを受けてみた。
結果は惨敗。
それでも諦めずにオーディションを受けて、ようやっと受かったのがAILEだった。
AILEの裏側は結構えぐいもので、誰と寝たとか、ブランド物買ってもらっちゃったとか、そういうことばっかり言う子が多かった。
それでも続けられたのは徐々に増えてくファンの人達のおかげだった。
誠心誠意ファンに対応してたら、2番手なんて言われるようになった。
センターになりたいけど、枕営業みたいなことはしたくなかった。(センターの子は色んな人と寝てたみたいだった。)

厳しいレッスンと勉強の両立はなかなか難しく、いよいよ点数に響いてきた。
もう、無理かもしれないと思ってた。
そんな時に友人に勧められたのがQuizKnockの動画だった。
QuizKnockの人達と同じ大学を出てるからと軽い気持ちで見たらどハマりしてしまった。
特に須貝駿貴さんにハマってしまい、過去に出演してる動画を全て見た。
こんなに頭良くて、面白くて、かっこよくて、運動もできて。

そんな彼に恋をしてしまった。

キャンパスは違えど、同じ大学なのだから会いに行こうと思えば会えるのに会いに行かなかったのは自分に恋愛経験なんてなかったからだ。

淡い恋心を抱いてから、やる気が出てまた頑張ろうと思えた。
そうこうしてると月日が経ち、私は3年になった。
そろそろ将来のことを本気で考えなければいけないそんな時期。

その日は少し暑かった。
無料公演のビラ配りを強引に押し付けられ、外で配ってた。
そんな時に、私が会いたくても勇気が出せず会えなかった彼が目の前を通り過ぎようとした。
こんなチャンスは他にない。


「今日は無料なので見に来てくれませんか?」


ビラを彼に渡した。こんなにドキドキするのは初めてだ。
彼はビラを手に取り、私の名前を聞いた。
「名前です」と答えると、「名前ちゃんね、見に行くね」と答えてくれた。

その日の公演はいつもより緊張した。
握手会とチェキ会で彼は私を選んでくれた。
変な顔してないかなとか、汗臭くないかなとか、いつも抱かないような不安を抱く。

また来て欲しいと願ってたら、次の日も、その次の日も来てくれた。
まさかこんな私を推してくれるとは思っていなかった。
こんなに嬉しいことってあるのだろうか。
本当は私も東大生なんです、って何度言おうとしたことだろうか。
でも、彼の推してる私は、おバカキャラで謳ってるアイドルの名前ちゃんなのだから、そんなこと言えなかった。


それから3ヶ月くらいだった頃だった。
その日は凄い雨だった。雷だって鳴ってる。
今日はさすがに彼は来ないかな、なんて考えてたらプロデューサーが私を呼んだ。


「メジャーデビューしないか?俺と寝たらデビュー曲でセンターにさせてやるよ」


驚愕した。こんなこと本当にあるんだ。
私は考えるよりも先に足が出てしまった。
思いっきり男性の大事なところ蹴ってしまった。


「AILE、辞めます」


私は土砂降りの雨の中走った。

私がどんなに頑張ろうと関係なかった。センターになれないのは枕営業してないせいだったんだ。
そんな黒くてどろどろな世界はもう嫌だった。

走り疲れて、広場のベンチに座っていた。


「ねえ!良かったらこれ使って!」


顔を上げると、そこには彼がいた。
彼は傘を私に渡す。
私は彼に拾われた。

その後、伊沢さんのお誘いでQuizKnockで働くことになったが、なかなか彼と話す機会がなくもやもやしている。
もやもやしていると山本さんとこうちゃんがカフェに行かないかと誘ってくれた。
行きたかったので、お誘いを受けようとしたら、彼が止めた。
そして、彼から改めてお誘いを受けた。

彼はとても話上手で聞いてて楽しい。
本当に好きだと感じた時間だった。

これはもう我慢できないと、勇気を出して告白することにした。
でも勝算はなかった。
だって彼が好きなのはアイドルの名前ちゃんなのだから。
それでも伝えたいと、その日、彼を誘った。
告白の場所は決めてある。あの広場だ。

今日は雲ひとつない、良い天気だった。
少し暗くなった広場を街灯が照らしている。

玉砕覚悟で好きだと伝えたら、私は彼に抱き締められた。





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