恋に落ちる。
それは真夏とはまではいかないが、それでも暑い6月上旬だった。
友達との約束がキャンセルになり、何するかー、なんて考えながら歩いてると、ビラを配ってる女の子がいた。
ツインテールで、赤い色のアイドルのような衣装を着た女の子だ。
ビラを見ると、AILEという地下アイドルの宣伝だった。
その子は「今日は無料なので見に来てくれませんか?」と、可愛い声で、ふにゃあってした笑顔で言われたら、これは行くしかないでしょ?
名前を聞くと名前ちゃんとのこと。名前も可愛い。
会場に入るとファンが大勢いた。こんなに人気なのに知らなかった、なんて思ってたら、7人の女の子達が出てきた。みんな可愛いが、名前ちゃんが1番可愛く見えた。
一通り挨拶が終わると(名前ちゃんがほわほわしてて可愛かった)、曲が流れた。
曲も悪くない。むしろ俺好みの曲だ。
なんと言っても名前ちゃんが可愛い。
歌もダンスも他のメンバーよりずば抜けて上手い。
「名前はなんでこんなにスペック良いのに2番手なんだろうなー」
ファンのその一言が気になった。
1番人気じゃないのか、このスペックで。
歌もダンスもみんなより上手いのに。
何曲か披露した後は、なんと握手会らしい。プラスでお金を支払えばチェキも撮れるとのこと。
せっかくだしチェキ撮るかな、と思い、列に並ぶ。
人気なだけあってなかなか順番が来ない。
スマホを弄りにながら待ってると順番が来た。
「あれ!君、さっきビラもらってくれたよね!来てくれてありがとう!」
テンプレのようだが名前ちゃんに話しかけられると、なんだか嬉しく感じる。
「(覚えててくれた…!)はい!見に来ました!」
「嬉しいよ!名前はなんて言うの?呼んで欲しい名前とかある?」
「あ、じゃあ駿貴って呼んでください!」
「駿貴君!覚えた!」
両手で俺の手を取り握る。
温かい、柔らかい、綺麗な手。
「手、おっきいね」
なんて言われたら、もうイチコロ。