HappyValentine!
ライター設定です。
最近テレビに出ることが多く、そしてバレンタインの季節ということもありチョコレートを貰う機会が多い。
それを良く思っていない名前は、「こんなに貰ってるなら私のはいらないですよね」と言ってきた。
いらないわけないのに、忙しくて、「無理しなくていいよ」と、忙しくてイライラしてるからかどっちつかずの回答をしてしまった。
名前は悲しそうな顔をしていた。
そしてバレンタイン当日、名前は本当にチョコレートを俺に渡してこなかった。
お菓子を作るのが好きな名前は手作りのチョコレートをみんなに渡していた。
密かに名前のことを狙っている山本が「美味しい!毎日食べたい!」と大胆な発言をしていた。
俺の彼女なのに、そんなことを言って彼女が本気にしたらと思うと不安になってしまう。
「伊沢、チョコもらった?」と須貝さんに聞かれたときは「俺は沢山貰ってるので」と、失言。
それを聞いた名前は、また悲しそうな表情を見せた。
その日、夜遅くまで仕事をしているとコーヒーを飲みたくなった。
給湯室でコーヒーを入れに行くと名前がいた。
「伊沢さん…」
「まだ残ってたのか。もう遅いし帰っても良いよ」
「みんなのお手伝いしたいから」
優しい彼女はみんなにコーヒーを入れようとしていた。
「俺もコーヒーもらっていい?」と聞くと、「うん、後で持っていきますね」と嬉しそうに言った。
自分のデスクに戻り、仕事を進める。
……このままでは本気で別れてしまう。
女性経験があまりない俺は、好きだよ、とか、可愛いとか直接的なことを言うのに慣れていない。
山本みたいに思ったことを言えたら良いのに。
仕事は上手く出来ても、名前のことになると上手くいかない。
大きめの溜息を吐く。
「伊沢さん、ここに置いておきますね」
「ありがとう」
随分と時間がかかったなと思い、デスクに置かれたマグカップを手に取ると甘い香りがした。
不思議に思いながらそれを飲むと、甘いチョコレートの味。
「名前」
「どうかしましたか、モテモテの伊沢さん」
そんな嫌味も可愛く見えて、俺は思わず笑ってしまった。
「おいで、名前」
「はい」
他のみんなは別室で作業しているため、この空間には名前と俺の2人だけ。
傍に寄ってきた名前に、「俺、忙しかった」と言うと、「知ってますよ」と優しい声。
「チョコ、貰えないかと思ってた」
「あぁ、あげないつもりでしたよ」
「えっ」
「ふふ、冗談です」と笑顔の名前に安心して、立ち上がって抱き締めた。すると俺の背に名前の腕が回ってきた。
「チョコレート、本当は欲しかった」
「私もムキになりすぎました」
「山本とあんまり仲良くしないで」
「……なぜ」
「俺が嫌なの!」
本当は独り占めしたいくらいだ。
「ねえ、敬語やめて」
「でも、伊沢さんはCEOですし」
「距離感じる。何回も家に来てるのに敬語だし。苗字呼びだし」
「……善処します」
頬に手を添え、口付けすると甘いチョコレートの味がした。