そして僕は


あつい。

腰に回されてる腕も、後頭部を押さえてるその手も、触れてる唇も、全部あつい。

クーラーは体に負担がかかるからと、窓だけ開けた自分の部屋で、もう何十分キスしただろうか。


「ん……名前、顔真っ赤」

「だれの、せいで…っ」

「俺のせいやね」


そう言ってまた唇を重ねる。
キスの最中に息が吸えないため、なんとか唇から離れ呼吸をするも、それは拓朗が許さない。


「た、くろ…っ!」


もう息ができないと訴える。


事の発端は、3時間前だ。
映画館に行こうと誘われて、めいっぱいのお洒落して、待ち合わせ場所に向かった。
目的地にたどり着き、拓朗を見かけた時、驚愕した。


「えぇ……」


彼は3人の女性に囲まれていたのだ。
みんな綺麗な人だった。
そりゃ、私は綺麗じゃないし、拓朗に腕を絡ませてる女の人みたいにボンキュッボンじゃない。
ああいう人がいいのかな、なんて呆然としながらたちすくんでいると、拓朗がこちらに気付いた。


「名前!」


彼は、ごめんな、と周りの女性たちに言ってこちらに駆け寄る。


「……拓朗、来るの早いね」

「楽しみにしてたから」


優しく微笑む拓朗。やっぱりかっこいい。
腕を絡ませてた女の人のほうが、ちんちくりんの私なんかよりお似合いだ。
あーーーー、悲しくなってきた。
こんなモヤモヤした気分でデートなんてできない。


「名前?」


優しく名前を呼ばれる。
その声に胸がキュンとしたが、今はそれどころではない。



「わ、私、家に帰る」


最低だ。嫉妬して、彼を困らせてしまった。本当は映画見に行きたい。でもこんな気持ちで見ても楽しくない。
泣きそうになり俯いてると、彼は私に手を差し出した。なんのことかと思い、顔をあげると彼は微笑んでいた。


「家に行くんやろ?ほら」


私の手を取り、そのまま歩き始めた。






名前と映画を見に行くからと約束の時間1時間前に到着してしまった。楽しみのあまり早く着きすぎた。
大人しくスマホでゲームをして待っていると3人の女性に声をかけられた。
逆ナンは初めてで戸惑っていると、女性の1人が腕を絡ませてきた。
こんなところ見られたらまずいと「彼女と待ち合わせしてるんで」と断ってもなかなか離れない。
そんな時に彼女が来た。
今日は雰囲気が違う。もしかすると名前も楽しみにしてくれてたのか。
ただ、表情が曇ってる。
女共を振りほどき、名前に話しかけると「わ、私、家に帰る」なんてことを言う。
今にも泣きそうだ。

突然だが、俺はそんなに恋愛経験豊富な訳ではない。素っ気ないなんてよく言われたものだ。
でも名前にだけは優しくできる。
それくらい好きなのだ。

話を戻すが、名前が泣きそうになってる原因はさっきの女共だろう。
所謂ヤキモチだ。可愛いやん。

手を繋いで名前の住む部屋まで歩いた。
部屋の鍵を開け、中に入る。

あつい。

クーラーを切ってるから当たり前なのだが、それでもあつい。
「クーラーつけるね」という名前に、体が冷えるからと窓を開けるように指示した。
火照った体に触れるのが好きなんだ。


「あ、の、拓朗?」


なんで、という顔をする名前にキスをした。
止まらない。止まるわけがない。
一旦唇を離し、ソファーに座らせ、再度キスをする。


「んっ、ふぅ」

「可愛い、名前」

「も、息が、んんっ」


彼女の身体があつい。
腰に手を回し、頭を押さえ、唇を貪る。

彼女といると、自分はただの獣なのだ。








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