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大凶の元旦

ある年の元旦、凍てつく寒さの中俺は在日中のU房を引き連れて地元の神社にやって来た。
人で溢れかえっている神社を目の前にして彼は更に興奮したらしく、子供のように俺の手を引っ張った。
あ、れ?主導権は俺にあったんだけどw
でもまぁ、もしかするとその方かよかったかもしれない。
U房はうまいこと長身を生かしてすいすいと人混みの間を縫って先導してくれた。


「伊八!あれ、行きましょうっ」


人混みに酔って、いい加減帰ろうと思ったその時だった。
俺の手を引く彼が振り返ってある方向を指さした。


「..?なんぞ?俺何にも見えないんだけどw」
「うーん、私にも何て書いてあるのか読めなくて..。」


意味も分からず行きたいのかこいつ死にたいのw?
それで総合案内所みたいなとこだったらちよっとガチで怒るお?
まぁ確かに、せっかく来たんだし、U房もお参りだけじゃ物足りないだろうなぁ。
俺は渋々彼の行かんとする場所へついて行ってみることにした。




****************



「...。」


一枚のぺらぺらした紙を折り広げて、それをただ見つめて動かないU房。
まぁね。
新年早々縁起でもないこと言われたら、そらまぁ落ち込むよね。


数分前、俺たちが行き着いたその先は神社の端に設置されたブース─ おみくじ売場だ。
U房はそれを見るや否や、財布から100円玉を小箱に入れて無造作に木箱からおみくじを取り出した。
前列の人からやり方学習したのだろう。
そしてすぐにそれを開き、俺にはっきりと見えるように提示した。


「伊八!これ、どういう意味ですかっ!?大きい..?」


正直なところ、U房に真実を言おうか迷っていた。が。
妙に悪知恵だけは働く俺に思い浮かんだ名案から、真実を彼に言い放つのは自明であった。
俺はその文字を真剣に読み解くそぶりを見せて、より一層深刻な表情を作り出した。


「U房..これ、大凶だよ....。」
「ダイ...キョ?」
「占いで言うところの、今年は最悪な一年って意味。」
「えっ....。」


青ざめていく彼の整った顔。
これはたまらんwww
俺はこみ上がる感情を押し殺して、ある提案を彼にする。


「病気とか、災難とか、大切な人に不幸が起こったり...。だけど、それを食い止める方法が一つだけあるんだ。」
「お、教えてください!伊八に、伊八に何かあったら...」


俺は内心にんまりと笑ってU房の純白の瞳を覗いた。
ほんとにいいの?と、念を押す。
こくりとうなずく、長身の彼。


「それはね..その大切な人の為に、今日1日尽くすこと。」
「!」
「そうしたら、きっと神様も見直してくれるって、2ちゃんにあった....」


U房は最近俺に洗脳されて、もはや2ちゃんが全ての情報源的扱いになっている。
正しい教育法ww?俺に聞くなしwww
そして予想通り、U房は唾を飲んで俺の手を取る。


「分かりました!今日一日、伊八に尽くします!今まで以上にっ..!」
「ほんとー?じゃあU房は俺が望むことを何でもしてくれるってことだよねw」


にやり、と笑ってU房の手を握り返し、彼の顔を伺えば、やらかしたと言わんばかりに見開かれる瞳。
このあと、新年早々何が起こったかは、もちろんその想像通りと思っていーよ?





end.
(何時何が起こるかなんて、知ったこっちゃないじゃん)

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