小説 | ナノ


君のいる朝


朝は嫌いだ。
眠いし、寒いし。
何よりこれから血みどろの戦場を想定した訓練をまたへとへとになるまでやるのだと朝日が俺の体を起こすのが嫌でたまらない。


でも今日の朝は特別。
いつもは布団が俺の体に覆いかぶさっているだけだけれど、今日はその布団じゃなくて、俺の大好きなU房が傍で気持ちよさそうにすやすやと寝ているから。
彼は俺のことを後ろからぎゅっと抱きしめたまま、規則的な寝息を俺のうなじの後ろで立てている。
はぁ、こんなんでいつもみたいに布団から出られるわけない。
訓練なんて投げ出して、本当にこのまままた眠ってしまいたい。
もそもそと彼の手が自分から離れないように小さくくるまると、U房はそれに気づいたのか、うぅんとうなった。


「朝... ですか,,」
「違うお、まだ夜..」
「えっ、でももうこんなあかる...ッ!」


U房が跳びあがって起き上がろうとした腕を俺はとっさにつかんだ。
離れるな。ここにいろ。
ぎゅっと握りしめた手に力が入る。


「伊八...」
「もうちょっと、もうちょっとしたらちゃんと起きるから..。」
「でも..」


訓練で鍛え抜かれたU房の立派な上半身が朝日を浴びてあらわになっている。
あぁ、ずるい。そんな困った顔でこっちを見るなって。
しかしU房はすぐに歯を見せてにこやかに笑って、俺の頭をゆっくりと撫でた。


「起きましょう?上官にまた怒られてしまいますよ。」
「ヤダ。」


ほっぺを膨らましてスネたフリをしてみる。


「わかりました、じゃあ朝食に伊八が食べたいものを料理します。」
「んん...」


その間もU房はずっと頭を撫でている。
ドキドキしていたせいか、すっかりと睡魔は消え失せて、さらにU房の思惑なのかお腹の空腹感もピークを迎えつつある。
そんな俺のことを知ってのことなのか、U房は俺のぼさぼさの前髪をそっとかき分けて額にキスを落とした。
ちゅっと小さな音がなる。


「U房...」


俺は思わずむずがゆい顔をした。きっと俺今女みたいに顔真っ赤にしてんだろうな。


「さ、これでも起きないっていうんなら...」


U房は立ちあがって俺の前で中腰になるや否や、俺の体の下にがっちりした腕を滑り込ませて、そのまま彼の方へ引き上げた。
丁度お姫様だっこのようだ。


「強制送還です。」


U房のきれいな瞳が俺の目の前でふっと笑った。
あぁ、こんなの外国人がやるとやけに様になるって、本当この世の中狂ってる。


「じゃ、米と味噌汁..」
「承知しました。」


その後何故かそのまま台所ではなく、風呂場へ連れていかれたのは、また別の話.....







end.


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