光謙 | ナノ
雪は嫌いだ。


どうしてこうも、思っていないことを言ってしまうのだろう。
小さい頃から無駄に心配性で、泣いてばっかりいた俺。
だけど、そんな俺にも大切な人が出来た。
俺は、桜のごとく舞い散る雪の中、その人と最高の思い出をつくるつもりだった。
のに。


「謙也さん...。」


今目の前で俺を一途に見つめている財前の顔はひどく悲しそうだった。
こいつは普段から無愛想やから、感情を表情になんて出さないけど、でも、なんとなくそんな気がして...。
財前は、あれから口を開かない。
なんや、図星か。
否定して欲しくて別れ話みたいに切り出しただけなのに、まさか、それが本当たったなんて考えたくもない現実が俺の目の前で突きつけられる。
絶望的だ。
もっと、酷いことを言えば否定してくれるだろうか。
そんなことを考えて震える口で言葉を発しようとするが、そんな言葉は空気となって消えてしまう。
そうや、俺も...弱虫やった...。
突然、財前は立ち上がり、こちらへやってくるや否や、俺の手を暖めていたココアを取り上げ、肩を掴み、勢いよく俺の体をそのベッドに倒した。


「...っ」


いつの間にか俺の上に騎馬乗りになっていた財前。
その表情は冷たくて、他人を見下すような重い瞳が俺を写す。


「まさかそれ、本気で思ってるわけやないですよね?」


冷徹な視線が俺の甘え心をずきずきと突き刺す。


「ちがっ......ん...」


必死でもがいて否定した途端に塞がれる唇。
それはまるで言い訳を封じ込めるような...そんな、強いキスだった。
初めはバタバタさせていた足も財前に蹂躙されてからはすっかり力なくベットにもたれてしまった。
財前の熱い舌が俺をかき回す度に体から力が抜けていく。
生理的な涙で視界がかすんできた頃、空気の音を名残惜しく立てて唇が離れる。


「俺が謙也さんと外出してるとこ、人に見られたら嫌ややって...?」
 

低い、かすれる声が俺の耳元で刺激する。
俺は赤面しながら、小さく頷く。
もう言葉なんて、そんなもどかしいものは出てこない。


「俺は逆に町中を謙也さんと手繋いで堂々と歩いてもええと思ってます。」


深い緑の瞳が小さな俺を覗いて、服を剥いでいく。
露わになった胸の突起に舌を這わせる光。
俺は小さく震えて快感に堪える。
冷たい彼の手が胸を伝い、もう片方の飾りをひっかいて、つまんで、刺激する。


「んんっ、ふ..ぁっ」
「やっぱ、ここ、好きなんですね。でも..もっと気持ちいいとこ、知ってますよ。」


低く囁かれ、彼の手が胸を、腹を、そして太股を撫でてから秘部へと細い指が走る。


「ふあぁっ..!」
「....かわええ」


ふっと財前が笑ったその瞬間に挿入される2本の指。
俺は気持ちよさで我を忘れて声をあげた。
くちゅくちゅと、厭らしい音をわざとたてるように抜き差しされるそれ。
自然と揺れる腰。財前が愛おしくて、愛おしくてたまらなかった。


「もっと、もっと挿れ..ぇっ、財前の....!3本んんっ...!」


必死に声を絞り出して言葉を紡げば、やっぱり彼は笑って、俺の身体に自身の身体を密着させ、俺の顔を覗いた。


「謙也さんがもうそういうこと言わんで、俺とデート日和に一緒に出かけてくれるんなら。」
「ぉんっ..、あれ、ほんまにぃ..ッ嘘やってんっ!今度、行こ....っ、デートぉッ」
「..。」


俺がそう返事をすると、いっきに膣内が晴れ上がるような感覚に襲われた。
痛いのに、気持ち良くて、やみつきになるこの感覚に、俺はさらに腰を振って財前を誘った。


「ふ..ッあぁん!ざい..ッぜん....!」
「はぁ..っ、ほんま、謙也さんて誘い上手。」


財前は俺への挿入を続けながら、片手で器用に自身を露わにして、それを俺の腹に擦り付けるようにして腰をふった。
財前のが直に触れていると思うと、さらに俺の興奮は高まるばかりで。


「あんっ、ぁあんっ..!ざ、いぜんっ!挿れ、てぇっ!財前の、大きくてぇ....っ、太いのぉっ....ん!」


財前の律動に合わせて腰をふってねだってみせると、展開は早かった。  
財前も先走りで濡らした自身を、俺の蜜で濡れたそこに宛てがい、勢いよく挿入した。
指で広げていたこともあってか、慣れれば痛みは全て快楽に変換される。


「はぁっ、ぁっ、謙..也さんっ」
「ひぁんっ!....ッあぁん!」
「締め付けすぎ..やって..」
「うぅんッ、はぁんっ!」


どんどん勢いを増す上下運動は、さらに俺を狂わせる。
最奥まで突かれて、寸前まで抜かれて、また挿れられて。


「あっ、あんっ!も、イくぅぅっ..!」
「イって下さい..ッ!」
「はぁっ、ああぁぁぁあ!!」


ばんぱんになった自身から吐き出される欲望が財前の下腹を盛大に汚して、俺は達した。
財前も最後の締め付けで俺の中を白蜜いっぱいにして、達したらしい。
俺は後処理もせずに、財前を抱きしめたまま深い眠りについた。




**************




「......はぁ。」


やってしまった。
俺は謙也さんに抱かれながら1人ため息をついた。
繋がったまま寝るて、謙也さん死にたいん?
ま、ええか。


謙也さんもまさか本気であないなこと言ってるなんて思えない。
やって、学校でさえ俺にべったりなんやで?
謙也さん、不安やったんやろな。
普通の恋人なら雪の日のデートなんて、きっと憧れやろ。謙也さん含めて。


「堪忍な。謙也さん....。」


俺はすやすやと寝息をたてる謙也さんの額にキスを落とし、ふさふさの髪を撫でた。
俺も、そろそろトラウマ卒業せんとあかんね。
でもそれは、今度の雪の中での会話で。




(大切な人を傷つけたくないから、過去とさよなら。)






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