お礼SS第3弾は「高く高く、大空に。」後日談です。
セコプリ前提、ザンツナ。




交わった視線に、記憶が蘇る。否、自身の記憶であるという確信はない。
記憶が、生まれたというべきなのだろうか。

心底愛した人が居た。
何より、誰よりも愛した、人。

どんな者よりも美しく、穏やかな瞳を持って。
呼ぶ声は、耳に心地良く。
伸ばされる手を取ることを、躊躇しない。

記憶の人は、笑っていた。
幸せそうに微笑んで、「幸せ」だと言った。
その言葉に、心がじんと熱くなる。久しく忘れていた感覚。
憎しみと怒りばかりが募り、忘れていた。
…必要のないものだと、自分から手放していた。


「愛しい」という、感情。


けれど、その瞳。橙に輝く、真っ直ぐな眼差しを見たその刹那。
沸き上がる、感情。怒りでも憎しみでもない、ただ、純粋な――――。

その瞳が、穏やかに自分を見ることはないはずだった。
怯えの中に、確かな怒りを持った、そんな眼差しだけのはずだった。

なのに何故。
穏やかに笑うその表情が、浮かぶのか。
自分を真っすぐに見つめて、そして、名前を呼んで、手を伸ばす。
嬉しそうに。幸せそうに。

自分の記憶であるはずがない。だけれど確かに、覚えがある。
自分は、伸ばされた手を掴んだ。
幸せだと言う声に、歓喜した。


―――――ならば、相手は?


記憶の中の姿は、今対峙している姿より、幾分か大人びている。
しかし、その面差しは間違いなく、持っていて。
真っすぐな瞳。少し困ったように下げられた眉。
記憶のそれと、相違ない。

…だが、矢張り何かが違う、とも思う。
記憶のひとは、怯えていなかった。
僅かな戸惑いはあれど、こちらを見て、身体を震わせたりはしなかった。

それに、目の前の存在は。

こちらに手を伸ばしたり、しないだろう。
幸せそうに笑って、名前を呼んだりは、しないだろう。
矢張りこの記憶は、何かの間違いなのか。
だとしたら、これだけ鮮明に浮かんでくる感情は、一体何だと言うのか。

その時。

小さな手がこちらに伸ばされて、服の袖を緩く握り締める。
戸惑いの表情は変わらぬまま。怯えも未だ、消えてはいない。
震える唇が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。



「今度は…ずっと、一緒に居られる、のか…?」




抱きしめた身体は、記憶のそれよりもっと小さく。
だけれど、その温もりは。



少しも変わらずに、在り――――。






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解りづらいけどザンツナです。サイト作って初めてのザンツナ。
最初がスクツナとか訳わからんことやらかしたから^^^

高く高く〜…のアフターはそのうちじっくり書きたいです。

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