「ふわあ…ねむ」



HRを終え、大きな欠伸が出た。担任の話が如何せん長い。天気が良い日は窓際の席に座る夏見にとったら子守歌にしか聞こえない。ポカポカと温かい陽光に包まれ、机に突っ伏して寝ようとすればスカートの中の携帯が震えた。短い震えは電子手紙(メール)の着信。電子手紙なら今見なくてもいい。机に突っ伏したまま窓側に顔を向けた。昨日はあれから、中原お勧めのレストランに連れてってもらえた。あの男の話題は極力避けた。出なければ、食事が不味くなる。



「美味しかったな…」



また連れてってほしい。中原が気に入るだけのこともあり、料理だけでなくお酒の種類も豊富だった。未成年の飲酒は法律で禁止されているが知った事じゃない。悪ィ餓鬼だな、と云いながら声色に咎めの類は一切含まれていなかった。中原の好きな銘柄からレストラン一押しの酒どれも絶品。また行きたい!と強請ると時間が出来たらな、と髪をクシャクシャと撫でられた。



「中原さんは頼れるお兄さん、太宰さんは優しいお兄さんってとこかな」



二人とも夏見に優しい。初めて会った時懐かしさを感じたのは何故だったのか。太宰も中原も夏見と会った事がある様な気がすると云っていた。どこで?と記憶の奥まで辿っても見付からない。小難しい表情から一転、その内思い出すだろうと上体を起こしスカートのポケットから携帯を取り出した。さっきの電子手紙の確認だ。しかも二件同時だった。



「『檸檬』さんと『リンタロウ』さんからだ」



『檸檬』と『リンタロウ』と云うのは、夏見が嵌まったアプリゲームでよく会話をしたりアイテムを交換したりした相手でメルアド交換しませんかと伝えると相手は快く了承した。それから多くても毎日、少なくても2〜3日に一度は遣り取りをしていた。リンタロウの電子手紙を読んだ。


“エリスちゃんが風邪を引いてしまったよお!私は如何したらいいかな!?苦しむエリスちゃんがあまりにも痛々しくて見ていられないよっ!!”



「エリスちゃんって確か、よく話題に出てくる女の子だよね。風邪引いたんだ…うーん…あ、そうだ」



“何か好きな果物とか食べさせてみては如何ですか?後、咳が酷い場合はアネトン飲むと良くなりますよ”と返信。次に檸檬の電子手紙。


“昨日同僚のじいさんと酒飲んだ帰りにじいさんが内の幹部が女の子と食事してるの見てね、女の子がその幹部と凄く親しげにしてるから気になってるんだけど。21歳の男が中学生の女の子と逢引(デート)するってどう思う?”



「21歳で幹部って凄い…。うーん、そうだなあ、」



“ギリギリ許容範囲(セーフ)では?中には、30歳差のカップルだっていますし。もしかすると身内の方かもしれませんし”と檸檬に返信。

次に電子手紙が来るのを楽しみに待つとするか、と再び机に突っ伏した。瞼を閉じて数秒で夢の世界へ落ちた夏見の携帯が震えたのは僅か10秒後。

そして、移動教室なのに教室で寝ていたのを担任に見付かりこってり絞られた挙げ句反省文を書く羽目になった夏見だった。



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