Novel
鬼と命

鬼。

生まれ方や種別は多々あるが、特徴としては主に「角がある」「60%は天然パーマ」といった事が挙げられる。
膂力に優れ頑健な身体を持っており、酒好きで他種族からは「ウワバミ」と言われるほど強い。また、強い鬼や偉い鬼は「鬼神」と呼称される事もある。

数千年という時を生きる種族ではあるが、その命は永遠ではない。
死を迎えれば人間のように転生するのか、はたまた“消滅”するのか。

それらはいまだ謎のベールに包まれている。


・・・


そこまで読んで私、柚子は「ふぅ。」と小さく息をついた。

今読んでいたのは“鬼の生態”についての書物。資料室の奥に保存されているものだ。
そこは、閻魔庁で働く者も滅多に入ることを許されない場所だ。私は、鬼灯様にここの書物整理をすること、重要な書類に手を出さない事を条件に入室を許可していただいた。

しかし、本来ここの書物整理は先ほど述べたように重要な書類なども保管されているため、私の様な獄卒がするべきことではない。

ここに入る事が出来たのも、日々身を粉にして働き、暇を見つけては上司の雑用やお茶くみなどをした結果だ。こういう時、信用というのは大きな武器になると思う。

おっと、話が逸れてしまった。

まぁ、そんな感じでここに来たのだが、そこに記されていたものに私が探していためぼしい記述はなかった。

何故私がこんな事を調べてるかと言うと__



「柚子さん、探していた書物は見つかりましたか?」

「、鬼灯様!?・・・いえ、残念ながら。」



不意に後ろから名を呼ばれたせいで、若干声が上擦ってしまった。
なんとか平静を装いつつ振り返ると、私に入室許可をくださった鬼灯様の姿が。

どうやら、私の声が少し上擦っていたのはさして気に掛けていないご様子。
「そうですか。」と相槌を打ちつつ目線は私の手元に。



「“鬼の生態”ですか。どうしてこれを?」



どうやら私がわざわざこの書物の為にここに来た理由が気になるらしい。
鬼灯様には何かと気を掛けていただいてる節もあり無碍に断る訳にもいかない。どうしたものか。と考えを巡らせる。

そんな私の様子を見てか、「別に強制ではありません。話さなくても大丈夫です。」というと、私の頭に軽く手を乗せた。
ポンポンと一定のリズムであやす様に撫でる。

それが妙に恥ずかしくて、「すいません、やることがあるので!」と早口に言うとその場を早歩きで逃れた。








資料室に残された鬼灯は柚子の出て行った扉を見て、眉を潜めた。



「何やら深刻そうな顔をしていましたが、どうしたのでしょう。

 ・・・杞憂だと良いのですが。」



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