Novel
迷い込んで





ただ、普通でありたかった。


普通に息をして、泣いて、笑って、怒って、平凡な日々をすごして・・・


それだけでよかったし、満足だった。




「漫画の世界にトリップしたい。」とか友人と話したことはあったけど、心からそう思っていたわけでもない。

今まで生きてきた世界に不満がなかったわけではない。
けど、今まで育ててくれた親はもちろん、一緒に時間を共にした友達とか、近所のおじさんと離れるのは寂しいというか、心細いというか・・・



つまり私はチキンなのだ。


違う世界にほうりこまれてすぐ順応できるほど、たくましいヒロインなどではない。断じて。




それがどうして、こんな所にいるのか




前方にとにかく大きい川を確認。

言っておくが、家の近所にこんな大きな川は無かったはずだ。これは・・・テレビごしでみたアマゾン川レベルだ。川の底が見えない。
あれか、ゴミのポイ捨てによって川が汚れたってことか。どんだけゴミを捨てたんだ、現代人。恐るべき。



あれ、なんかすごい空虚感。



本当はわかってるんだ。これは、三途の川。
ただ、現状を受け入れられなくて、こうやって現実から目をそむけていた。



怖い、怖い、怖い、



目の前がぼやけてきた。鼻もツンとして、頬を生温かいソレがつたった。涙。
目元を手で強く拭うが、堰が切れたようにあふれる。



あぁ、駄目だな、私。
泣いたってこの現状は変わるわけでもないのに。

きっとアニメとかのヒロインなら、こんな所でうずくまってないで、
何故自分はここにいるのか。とか、まずどう行動するべきか。とか考えるんだろうなぁ





(迷い込んだ少女は、)

(涙を流した)




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